運転免許を自主返納できることは良く知られていますが、免許の「一部だけ」を返納することもできることはあまり知られていません。
例えば、
・普通免許
・普通自動二輪免許
を所持している人が、「大型免許」だけを返納するとか、「普通自動二輪」だけを返納する、といったことが可能です。
当然ですが、大型免許を所持している人が「普通免許」だけを返納する、ということはできません。
なぜなら大型免許は普通免許の上位免許のため、下位免許のみ返納することは制度上出来ないのです。
一部返納するのはどんなとき?
加齢による自主返納
免許の返納は、加齢によって運転することに不安を感じる人が、将来の事故リスクを回避するために返納することが多いですが、全て返納してしまうと、その後は一切運転することができません。
しかし、職業ドライバーとしては引退したが身の回りの用事で自家用車を運転することはあるので、大型免許だけ返納したい、という人や、もう200kgを超えるバイクに乗る体力が無いので自動二輪免許を返納したい、という人もいるかと思います。
そういった人は、返納する免許区分を申請することで、一部の免許を残しながら免許証を保持することが可能です。
僕の叔父も80歳を過ぎて免許返納を考えていましたが、移動手段が全くなくなると困るため、原付免許だけ残して返納しました。
通院や近所の買い物にはキャノピー付きのジャイロx(3輪スクーター)を使っています。
フルビット免許を狙う人
「フルビット免許」という言葉をご存じでしょうか?
これは、原付免許から一つずつ取得していき、免許証の免許区分全てに取得免許が記載されている免許証のことを言います。
現在の免許証は、赤枠のように免許種の文字が記載されていますが、昔の免許証は、取得した免許区分のところに「1」、取得していない区分には「0」と2進数で表記されていたことから、全てに「1」が記載されている免許のことをフルビット免許と言ったのです。
この表記ですが、例えば最初に普通自動車免許を取得すると、免許制度上は普通自動車と原付(1種)に乗ることができますが、免許証の区分欄には「原付」と表記されません。(昔の免許であれば「原付」区分欄に「1」と表記されない)
つまり免許証上の表記は、あくまでも免許試験を受けて合格した区分が表記されるものであり、全ての免許種を記載しようとすれば、下位免許から一つずつ取得する必要があります。
狭義のフルビットは、上で説明したように全ての免許種が免許証に記載されている免許で、広義のフルビットは全ての車両を運転できる免許のことを指すようです。
全ての車両を運転できる免許を取得するだけなら、もっと効率的な取得方法がありますが、単に免許証の区分を「全ての免許種で埋めたい」という目的のために、あえて遠回りして一つずつ免許を取得するという究極の自己満足です。
その感覚は僕には理解できませんが、まあそういう世界もあるのでしょう。
フルビット免許を晴れて達成しても、そこで終わりでないところがこの道の奥深いところ。
例えば、2017年に配送ドライバー不足を背景に、最大積載量7.5t未満の「準中型免許」が新設されました。
そうなると、フルビット免許を達成していた人は、次回の免許更新では「準中型」が記載されません。
ではどうするか?
普通免許までを一旦返納して、再び普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許…と取得し直すのです。
実際にそういうことをした人がいるのかどうか知りませんが、フルビッター目指している普通免許持ちの人が、2007年の法改正で自動的に中型免許(8t限定)になってしまい、8t限定を返納して普通免許にした、という話はネット上にありました。
そんなことする人がいるんですね。
下位免許だけの返納はできない
ここで注意が必要なのは、
ということ。
例えば大型免許を所持している人が「普通免許だけ返納」したい、という一部返納はできません。
これは、大型免許は普通免許の範囲も包含する「上位免許」であるため、普通免許の部分だけ除外する、という交付ができないからです。
通常、免許の一部返納は免許範囲を狭めることなので、「上位免許を返納、残す免許(下位免許)を申請する」という形になります。
免許返納に後ろ向きな親御さんを持つ人には有効かも
高齢の親を持つ方で、免許返納の説得に苦慮しているという話をよく耳にします。
体の衰えを自覚しながらも「運転はまだまだ大丈夫」と思っている方も多く、免許返納の話をしても意固地になってしまうケースが少なくありません。
そういう方には、「原付免許だけ残して返納する」といった段階を踏む免許返納も説得には効果的です。
キャノピー付きのジャイロxであれば、自動車ほどスピードが出ないですし、多少の雨風をしのぎつつ近所の移動には十分でしょう。
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