自動車の世界では「自動ブレーキシステム」や「衝突回避システム」が当たり前に装備される時代ですが、バイクの世界にも遅ればせながら安全装備の採用が少しづつ進んできています。
その中の一つが「コンビブレーキシステム(CBS)」というものです。
今回はこの聞き慣れないコンビブレーキについて解説します。
自動車では当たり前のコンビブレーキ
自動車ではブレーキペダルは一つしかありません。そのため、ブレーキペダルを踏むとフロントブレーキもリアブレーキも同時にかかります。
一方バイクのブレーキはフロントブレーキとリアブレーキの制御が独立しており、それぞれ握った(踏んだ)分だけブレーキが効くようになります。
これはバイクはバランスを取る乗り物のために、フロントブレーキ、リアブレーキが独立して使えるほうが便利だからなんです。
バイクに乗ったことが無い人には理解し辛いかもしれませんが、低速でバランスを取りながら速度を調整するときにフロントブレーキを使うと、フロントフォークが沈んでバランスを崩しやすくなります。
そういったときにリアブレーキを使うと、後から引っ張られるように制動されるためにフロントフォークが沈まず、その結果バランスを崩さずに速度を調整できるのです。
逆に言えば、自動車は倒れることが無いのでフロント/リアのブレーキを独立して制御する必要が無いとも言えます。
車の前後ブレーキの制動力配分は?
車のブレーキは、フロントとリアの制動力が50:50で配分されているわけではありません。
車を止めようとすると、慣性の法則で自動車は前に動き続けようとしますから、車体の荷重がフロント側に移動するため、フロントとリアの制動力が50:50だとリアタイヤが先にロックしてしまうのです。(リアタイヤの荷重がフロントタイヤに移動するため)
そこで自動車のブレーキは、ブレーキペダルを踏むとフロントブレーキのほうが強く効くように制動力が配分されています。
意外と難しいバイクのブレーキング
バイクのコントロールで一番難しいのが低速での車体コントロールです。
教習所での練習もほとんどが低速走行でのバランスを取ることに重点が置かれますし、実際街乗りでもリアブレーキをうまく使えると楽に操縦することができます。
特にUターンとか低速で曲がっているときにフロントブレーキを強く握ると、たちまちバランスを崩して倒れてしまいます。
いわゆる握りゴケですね。僕も何度か経験があります。
従来はこういった低速でのコントロールは練習と経験を通じて身につけるしか無かったのですが、スクーターなどの実用性の高い車種に関してはコンビブレーキなどを導入することで、ライダーに対する技能的ハードルを下げることができるわけです。
PCXに搭載されるコンビブレーキ
ホンダのスクーターPCXにはコンビブレーキシステム(CBS)が搭載されており、通常はフロントブレーキの役割を果たすハンドル右のレバーを握ると、フロント/リアブレーキの両方に制動力がかかるようになっています。
つまりコンビ=combineとは「結合する」という意味で、フロントブレーキ/リアブレーキを結合することを意味しています。
このコンビブレーキが二輪で威力を発揮するのは滑りやすい路面でのブレーキングです。
雨で濡れた路面、落ち葉の多い山道、砂が多い海岸近くの道路などで、制動力が最大になるようにフロント/リアのブレーキを効かせるのは、経験値の多いライダーでも難しい操作です。
慌ててパニックブレーキになってしまっても、車体側でフロント/リアのブレーキ配分を自動で調整してくれるので、ライダーの経験値をアシスト機能で補ってくれるわけです。
CBSのまとめ
・ライダーはフロント/リアの制動力を意識しなくても、最適な制動力をバイク側で配分してくれる。
・とは言っても安全に止まれることを保障するものではない
スポーツ走行やワインディングを楽しむモデルではコンビブレーキは逆にバイクの挙動をコントロールしづらいシステムですが、スクーターなどの実用車やロングライド主体のアドベンチャーモデルのバイクにはコンビブレーキは向いています。
今後、車体制御の技術開発が進むにつれて、他のモデルへのコンビブレーキの搭載が進むかもしれませんね。
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