釘が刺さろうが穴が開こうが走り続けられるタイヤがあればいいのに、って思ったことはありませんか?
実はそれを実現したタイヤが「ランフラットタイヤ」なんです。
最近は欧州車を中心にランフラットタイヤの標準装備が進み、軽自動車の一部でも標準装備されるようになってきました。
今回はそんなランフラットタイヤについて解説したいと思います。
ランフラットタイヤって何?
ランフラットタイヤとは冒頭で軽く説明したように、釘が刺さろうが穴が開こうが、タイヤの空気が抜けても80~100km程度までは走り続けられるタイヤのことです。
「パンク」というのは和製英語で、英語でパンクのことは”flat-tire”もしくは”flat”と言います。
銃弾で撃ち抜かれても走行できるため、要人輸送用のリムジンなどでも採用されています。
普通のタイヤとの違い
一般的に販売されているサマータイヤの多くはチューブレスタイプのラジアルタイヤで、釘や異物が刺さって空気が抜けるとタイヤが潰れてしまいます。
空気が抜けるとタイヤが潰れてハンドルがガタガタと震えてそのまま走行することが出来ません。
一方、ランフラットタイヤは普通のラジアルタイヤに比べてサイドウォール(タイヤの側面)が頑丈に作ってあり、空気圧が0になってもタイヤが潰れないので、80km/hで約100km程度の走行が可能です。(タイヤによって走行距離は異なります)
100km程度走れれば安全なところまで自走して移動できますね。
BMWでは2003年の5シリーズから全車にランフラットタイヤを標準装備しており、アウディやメルセデスなどの高級車でも標準装備化が進んでいます。
メリット
上でも言いましたが、出先でパンクしてもいきなりハンドルを取られたりすることなく、安全な場所まで走り続けられるところでしょう。
高速道路でパンクすると結構面倒なんですよね。
路肩に止めて、表示板・発煙筒を出して救助要請をしたり、スペアタイヤがあれば近くのSA/PAかICまで引っ張ってもらってそこで交換できますが、もしスペアタイヤが無くてパンク修理キットで直せないぐらい深いダメージだと、出先でタイヤ交換してもらえるところを自力で探さなければなりません。
昼間であればまだカー用品店やタイヤ量販店も開いてるので対応できますが、それが夜だったら交換用タイヤを探すのでさえ難儀します。
…と、不安を煽るようなことばかり書いてしまいましたが、最近の車にはスペアタイヤが標準装備されていないので、こういったトラブルは最近増えています。
ランフラットタイヤは、こういった出先での不安を軽減してくれるタイヤなんです。
デメリット
価格が高い
当然ですが、普通のタイヤよりコストがかかっているため、一般的なタイヤより価格が高いです。
激安店でも一本1万円を切るようなランフラットタイヤはまずありません。
最近は高級車を中心に普及は進んでいるものの、まだまだ値段がこなれるまで普及していません。
もっと標準装備化される車種が増えれば数の論理で安くなっていくんでしょうけどね。
乗り心地が固い
ランフラットタイヤは、空気圧が0になってもタイヤ形状を保たなければならないため、タイヤの剛性が高くなっています。
要するに空気圧が0になっても潰れないタイヤです。
つまり空気が入っていようが入っていまいがタイヤ自体の剛性で形状を保持しているため固いんですね。
タイヤが固くて潰れないので、低扁平率タイヤのように乗り心地が固くなります。
しかし最近のランフラットタイヤは乗り心地がかなり改善されてきて、一般的なサマータイヤと遜色ないレベルにまで改善されてきています。
タイヤ交換できないお店もある
ランフラットタイヤはタイヤ剛性が高いことから、普通のタイヤより力が必要です。
サイドウォールが固いので、普通のタイヤチェンジャーでは対応できずランフラット対応のタイヤチェンジャーが必要になります。
そうなると、ランフラットタイヤを取り扱っているお店や整備工場でないとタイヤ組み換えや修理が簡単に行えないのです。
そのため、急なパンクで修理工場までたどり着いても修理を断られる可能性があります。
それでも欧州車がランフラットタイヤを標準装備してから徐々に普及が進んでいるので、最近ではランフラットタイヤに対応できる設備も増えてきました。
エア圧モニターが必要
ランフラットタイヤは、その特性から運転中にパンクを知ることができません。
空気圧が0になってもタイヤ形状を保持して走り続けられるので、人間の感覚ではパンクしたのかどうかわからないのです。
空気が抜けていることに気づかずに走行を続けると、ランフラットタイヤが保証する走行距離を知らないうちに超えてしまい、修理不能なダメージを受けてしまう可能性があります。
そのため、ランフラットタイヤを標準装備している車にはあらかじめタイヤプレッシャーモニタリングシステム(TPMS)が装備されており、タイヤの空気圧を常時監視できるシステムが搭載されています。
ランフラットタイヤ非装着車に後付けでランフラットタイヤを装着する場合は、別途市販のモニタリング装置を付ける必要があります。
上の記事で紹介している「エアモニ3.1」のような空気圧モニタは、タイヤバルブに組み込まれた無線センサが空気圧データを車載モニタに送り、モニタ側で空気圧を常時監視しています。
ランフラットタイヤは、空気圧モニタシステムとセットで使わないと機能を果たさないのです。
ランフラットタイヤ自体も高いですが、更にこの空気圧モニタのコストも加わるので、こういった部分がランフラットタイヤを採用する最大のネックかもしれません。
まとめ
・空気圧0で走行できる速度は80km程度、距離は80~100km程度
・ランフラットタイヤは空気圧モニタと一緒に使う必要がある
現在のランフラットタイヤは第二世代から第三世代への過渡期にあり、第二世代で不評だった固い乗り心地も第三世代ではかなり改善され、普通のラジアルタイヤと遜色ないぐらいにまで改善されてきました。
ランフラットタイヤは、ファミリーカーやコンパクトカーに後から装着するにはややコストが高いタイヤですが、出先でパンクしたときのことを考えると、かなり心強い装備ではないでしょうか。
コメント