雪で大荒れしそうなときは出かけないのが一番ですが、そうは行っても出先で急な天候悪化に巻き込まれてしまうこともあります。
今回は、車が雪で立ち往生した際の対処方法について解説したいと思います。
雪道初心者に向けた解説記事はこちら
市街地でも凍死する場合がある
「凍死」というと無謀な登山計画が招いた事故とか、スキー場で新雪を滑りたくてコース外に行ってしまった結果迷ってしまったとか、なんとなくレジャーやアドベンチャー的な要素が絡んでいるイメージがあります。
しかし雪国では市内からほんの数キロ離れた街道沿いで、猛吹雪で脱輪して動けなくなったり、吹き溜まりに突っ込んでしまい自力で脱出できずに凍死事故につながってしまうことが稀にあります。
下の画像は何年か前に僕の実家(東北日本海沿岸部)から5kmほど離れた市街地で撮影したものです。
確か2月上旬だったと思いますが、典型的な西高東低の気圧配置で荒れ模様の一日でした。何も見えません(汗
僕は地元なのでここで立ち往生したとしても、場所がわかるので対処方法がいろいろと思いつきますが、ここが土地勘の無い場所だったら…と思うと結構怖いですよね。
もし吹雪の中、車で立ち往生したら
当たり前ですが、まずは自力で脱出を試みましょう。
それが出来るならやってるよ!といわれるかもしれませんが、タイヤが空転して動かない!と言って諦めるのではなく、そこからもう一歩踏み込んだ脱出方法を試してみます。
反動を使って脱出
例えば、Dレンジ、またはRレンジに入れて少しでも車が動くのであれば、その動く範囲を徐々に大きくするようにD→N→D…またはR→N→R…を交互に繰り返します。イメージはこんな感じで。
動くところまで行ったらN(ニュートラル)にして下がりきったときの反動を利用して再度Dレンジに入れて、車の動く範囲を徐々に大きくしていきます。反動を使ってブランコの振幅を徐々に大きくしていくようなイメージです。
タイヤが空転するだけで全く動かない
タイヤ下の雪が掘れてしまうとタイヤに荷重がかからずただ空転してしまいます。
その場合はタイヤ周りの雪を取り除かなければなりませんが、スコップなどが無い場合は、同乗者などに脱出方向に向かって押してもらうのも効果的です。大人が2名で押すとコンパクトカーぐらいなら大抵脱出できるものです。
ただし後下がりにスタックしているFF車(前輪駆動車)が、前方に脱出しようとすると駆動輪への荷重が効きづらいので脱出するにはもう少しパワーが必要かもしれません。
駆動輪の下に毛布や砂などを入れて摩擦係数を大きくするのも有効です。
押しても引いてもダメで、身近に毛布や砂が無い場合は諦めてロードサービスを呼びましょう。
特に吹雪の中での作業は急速に体温が奪われるので、自力脱出が無理そうだったら救助を呼ぶべきです。
救助を待つ間にやるべきこと
天候がそれほど荒れていなければJAFなどのロードサービスでもいいですが、猛吹雪で命の危険を感じるようであれば119番で救助の依頼をしましょう。
ただし、猛吹雪のときは救助要請が殺到するため、救助の到着には時間がかかると思ったほうがいいです。
その前提で、以下の対応を取りましょう。
残燃料の確認
残燃料(ガソリン)を確認して救助到着までの暖房をコントロールします。
アイドリングを8時間行うとガソリンを6~10リッター程度消費するので、タンク1/4程度残っていれば8時間程度はエンジンをかけて暖を取ることができます。
燃料が少なくて、救助要請時に到着まで時間がかかりそうなときは、防寒具を着てエンジンを止めて燃料消費を抑えるのも一つの手です。
外は猛吹雪でも車内は人間の体温で暖められるので、寒いのは寒いのですが意外と我慢できる寒さです。
それでも寒さに我慢出来なくなったらエンジンをかけて暖を取るようにして、少ない燃料を効果的に使って救助まで持たせるようにします。
一酸化炭素中毒の防止
車の立ち往生で起こる死因の一つに一酸化炭素中毒があります。
これは、雪でマフラーが塞がれてしまい排気ガスが車内に充満して引き起こされます。
車って厳密には密閉空間ではありません。
よく映画やドラマで車が港に落ちるシーンを見たことがあると思いますが、最初は車内の空気が浮力になって浮かんでいますが、徐々に水が入り込んで水没してしまいます。
車の床面は一見外気と遮断されているように見えますが、完全防水するほど密閉されていません。
そのため、吹雪や急激な降雪でマフラーが塞がれると、行き場を無くした排気ガスが車の床面に回り込んで車内に侵入してくるのです。
引用:JAF
JAFのユーザーテストによると、車の半分程度雪に埋まっている状態でアイドリングを続けていると、
・窓が5cm開いた状態:およそ45分程度で一酸化炭素が800ppmまで上昇
・マフラー周りを除雪:一酸化炭素濃度の上昇が見られない
出典:http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/usertest/co_poisoning/detail1.htm
という結果が出ています。
一酸化炭素濃度が1,000ppmというと3時間で死に至る濃度で、800ppmでは45分でめまい/頭痛/吐き気を生じ、2時間で失神に至る濃度です。
それを防ぐためにはエンジンを掛けて救助を待っている間は積雪量に注意して、時折マフラーが埋まるほど積雪が無いか確認し、積雪があればマフラーが露出するよう除雪してください。
たまに「マフラーは高温だから雪は融ける」と思っている人がいますが、急な大雪だと周囲10cm程度は排気熱で溶けるものの、それを覆うように雪が積もってしまいます。
また、何度除雪してもすぐにマフラーが埋まりそうになるというぐらいの降雪のときは、一旦エンジンを止めるのも一つの方法です。
これは防寒具で寒さをしのげる前提ですが、雪で覆われた自動車は意外と暖かいものです。いや、暖かいというと語弊がありますね。「意外と寒くない」と言ったほうが正しいかも。
酸欠を防ぐ
乗車人数が多いと、今度は車内の二酸化炭素量が多くなって酸欠を起こす可能性があります。
定期的にマフラー周りの除雪で出入りしていれば都度外気が入って換気されますが、車内にじっとしていると車内の酸素濃度が低下していきます。
少し息苦しいかな?と思ったら少し窓を開けて外気を取り入れるようにして酸欠を防ぎましょう。
普段から車に常備しておきたいモノ
毛布
毛布があると、エンジンを止めても十分に暖を取ることができます。
先日の福井県の大雪では、スタックしたトラックで幹線道路がストップし、丸一日経っても復旧しない状況が続きました。
さすがに24時間エンジンを掛けっぱなしにすれば満タン車じゃない限りガソリンが尽きてしまいます。
僕は最近ドライブ中の眠気を我慢できないので、車内での仮眠用に毛布とヨガマットを常備しています。
特に秋~春にかけてはSA/PAで休憩するときに毛布を掛けて仮眠すると早く眠りにつくことができます。
体が暖まると短時間でもいい睡眠が取れますし、足を伸ばして仮眠したいときは後席を倒して荷室をフラットにして、ヨガマットを敷いて仮眠をとります。
また薄手のブランケットを常備しておくと、寝てしまった子供に掛けたりできるのでとても便利です。
毛布は自宅で使い古したようなもので構いません。雪でスタックしたとき時はタイヤ下に敷いて脱出用に使うこともできます。
旅行先でレンタカーを借りるようなときはわざわざ毛布を持っていくのは大変なので、こんな携帯用のサバイバルシートが便利です。
登山やレジャーでも使えますし、自宅での防災グッズとしても使えるので常備しておくと便利です。
軍手、作業用手袋
雪道でスタックしたときは、野外での作業が必要になることがあります。
タイヤ周りの雪をかき分けたり、車を押したりすることもあります。
サラサラの雪であればまだしも、湿雪でザラメ状になった雪だと手が痛くですぐにかじかんでしまうので、軍手や作業用手袋があると便利です。
僕は滑り止め付きの軍手と洗車用のゴム手袋を車に常備しています。
ちょっとした作業のときは軍手で問題ありませんが、雪が濡れて滲みてくると手がかじかむので、そういうときは内側が起毛仕上げになっているキッチン用のゴム手袋があると湿雪のときでも手が冷たくなりません。
ライト
冬は日が落ちるのが早い上に、雪が降っているときは雲が厚いので昼でも意外と暗いです。
上で紹介した写真はこれでも午後2時頃です。一面雪なので明るそうに見えますが、少ない日光が雪で乱反射しているだけなので、あと1時間もすると急に暗くなってきます。
今はLEDライトが100円ショップで買える時代ですので、車に1つ常備しておくと何かと便利です。
僕はマグライト好きなので、LEDタイプのミニマグライト(単4×2本)を常備しています。
マグライトは米国では軍、警察、消防で採用されているぐらい頑丈ですし、電池蓋や可動部にはゴムパッキンが入っているので多少の雨でも大丈夫です。
ただしあまり使わないと乾電池が液漏れしてしまうので、適度に使用するか、もしくは液漏れ防止設計を謳っている国産の電池を使うといいでしょう。(maxellボルテージシリーズやPanasonicエボルタシリーズなど)
スコップ
タイヤ周りの雪を掘ったりするのにスコップがあると便利です。
…が、雪がほとんど降らない地域の人が滅多に遭遇するかどうかわからない雪のためにスコップを常備するのは無駄なので、他の用途にも使えるこんなスコップであれば便利です。
スコップ以外にも、ノコギリ、斧、ツルハシ、栓抜き、ホイッスル、着火棒(マグネシウム)、フィッシングナイフ、緊急用ハンマー、釘抜きなどに使えるので、サバイバルツールとして常備しておくと防災への備えにもなりますね。
まとめ
・ダメそうだったら素直に諦めてロードサービスを呼ぶ
・猛吹雪で危険を感じたら119番で救助を要請する
・救助を待つ間はマフラーが雪に埋もれないように注意する
(一酸化炭素中毒の防止)
先日も東北の峠越えの国道でトラックのスリップ事故によって後続の車が100台以上、4~5時間に渡って立ち往生したニュースがありました。
いくら自分が気をつけていても、周囲の道路状況に巻き込まれてしまうこともあります。
そういうときは復旧を待つしかありませんので、毛布が一枚あるだけでも暖かさが大分違います。
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