昔はよく車が車を引っ張ってる、いわゆる「牽引(けん引)」しているシーンをよく見かけたものですが、最近は車の信頼性が向上したせいか、ロープでけん引している車を見かけることはほとんど無くなりました。
とは言っても、機械の故障が0になることはありませんから、けん引フックの使い方は覚えておいて損はありません。
今回はそんなけん引フックの使い方を解説します。
けん引フックの使い方
けん引フックとは、車が路肩に落ちてしまったり、泥や雪にハマって自力で抜け出せないときに他車に引っ張ってもらうためのフックのことです。
古いクルマだと、U字型の丸棒がバンパ下のフレームに溶接されていましたが、最近はデザインの兼ね合いから、バンバー内に埋め込まれている車種が多いです。
フロントバンバーにある四角いはめ込みを、マイナスドライバーなどでこじって外すとネジ穴があるので、そこにスペアタイヤなどと一緒に収納されている丸いアイボルトを取り付けます。
ジムニーなどのオフロード車は、荒れ地でスタックすることがよくあるので、すぐにけん引できるようにけん引フックがフレームに溶接されています。
このフックに、けん引ロープを掛けて他車に引っ張ってもらうわけです。
けん引時の注意
けん引ロープの耐荷重に注意する
けん引ロープにはそのロープで支えられる耐荷重が規定されています。
例えば、車重が4tのトラックを耐荷重2tのけん引ロープで引っ張ると、最悪ロープが破断する可能性があります。
けん引ロープの先端には大きな鋼鉄製のカギフックが付いており、ロープが破断した勢いでその金具が飛んで来ると、車両側へのダメージはもちろんのこと、作業者が大怪我してしまう可能性があるのです。
そのため、引っ張る車の重量が使用するけん引ロープの耐荷重を下回っているかどうか必ず確認しましょう。
故障車をけん引する場合の注意
エンジンが動かない故障車は、トランスミッション用のフルードポンプが動作しないためトランスミッションの潤滑ができません。
そのため、フルードポンプが動作しないままけん引を続けるとトランスミッションが焼き付いてしまいます。
巷でよく「AT車をけん引するとATミッションが壊れる」と言われるのはそのためです。
しかし故障したAT車をけん引するとすぐに壊れるかと言えばそんなことはなく、車種ごとにけん引するときの条件が取扱説明書に記載されています。
けん引する距離は最低限に留める
上でも説明したように、エンジンが動かない車をけん引するとトランスミッションが潤滑されないので、けん引するときは30km/h以下の速度とし、移動距離も10km程度を目安とします。
ちなみにウチのエアウェイブはロープけん引での移動は30km/hで80km以内とすることが取扱説明書に記載されています。
急ぐときやそれ以上の距離を移動する必要がある場合は、駆動輪を持ち上げて移動できるレッカー車か、車自体を荷台に積み込むセーフティローダーを手配すべきです。
パワステが効かないので要注意
エンジンが動かないとパワステ用のモーターに電力が供給されないので、ハンドルが極端に重くなります。
そのため、けん引車が曲がるときは早めに心づもりをして、ハンドルが重い前提で操作するようにします。
ちなみに昔のパワステが無い時代に運転していた人でも、現代のパワステに慣れきってしまってるので、「重ステ」に慣れるには時間がかかることに留意しておきましょう。
ブレーキの効きが極端に悪いので要注意
これも、エンジンが動作しないとブレーキの倍力装置が働かないので、ブレーキが極端に重いです。
「ブレーキが重い」ということは効きが悪いということ。
「けん引する速度は30km/h以下で」というのはトランスミッションの潤滑が理由ではありますが、ブレーキが効きづらくて追突を避けるためでもあります。
冬場は窓が曇るので要注意
エンジンが止まっていると当然エアコンが動作しないので、冬場にけん引されると窓が曇ってきます。
湿気を含んだ吐息に満たされた車内が、けん引されることで冷たい外気に連続的に晒されるため結露してしまうのです。
タオルでフロントガラスを拭いてもすぐに曇ってくるので、たとえ寒くても窓を開けて外気を取り入れてあげるしかありません。
まとめ
・けん引は自力で脱出できないときのための緊急用と考えること
・他の手段が無く、仕方なくけん引する場合は、その移動距離は10kmを目安に
・その際は30km/h以下の速度でゆっくりと移動すること
本来、けん引フックは自力で脱出出来ない砂場、泥、雪などから脱出するために一時的に使うものであって、長距離をけん引する必要があるときは、駆動輪を持ち上げられるレッカー車を手配するか、車自体を荷台に載せるセーフティローダーを手配するようにしましょう。
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