世の中にはなぜか使い道の無い免許が存在します。
かつては必要とされていた免許でしたが、時代と共に輸送形態が変わり、車両自体が無くなってしまって免許自体が不要になってしまったケースです。
今回はそんな免許について紹介します。
使い道の無い二種免許
けん引二種免許
けん引免許と言えばトレーラーですね。
コンテナを乗せた大型トレーラーは幹線道路でよく見かけますが、旅客を乗せて営業運転するトレーラーは二種免許が必要です。
とは言っても「旅客を乗せることができるトレーラーバス」は、日本では東京都日の出町で運用していたバスしかありません。
このバスは武蔵五日市駅とつるつる温泉の間を結ぶ町営バスでしたが、車両の老朽化により2023年3月末で運行が終了してしまいました。
そのため、今の日本では「けん引二種免許」を取得しても使い道がない免許なのです。乗れる車両が無いのです。
とは言え、免許区分はありますから、免許自体の取得は可能です。
現在、この免許を取得する人は「フルビット免許」を目指すマニアぐらいでしょうね。
けん引二種
けん引二種の受験資格
けん引免許を持ち、大型、中型、準中型、普通、大型特殊免許のいずれかの運転免許を現に受けており、かつ、当該いずれかの運転免許を受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)が通算して3年以上の方又は他の二種免許を取得している方
(注記)道路交通法の一部を改正する法律等の施行により、令和4年5月13日から、一定の教習を修了することにより、19歳以上で、けん引免許を受けており、かつ、大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許又は大型特殊免許のいずれかの運転免許を受けていた期間が1年(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)以上あれば受験することができます。
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/menkyo/annai/nishu/tetsuzuki18.html
簡単に言うと、
もしくは
という、いずれかの条件を満たしていれば「けん引二種」を受験することができます。
上の「けん引免許を持っている」という人は、ほとんどが大型免許+けん引免許所持者でしょう。
面白いのは下の条件で、例えばタクシーで働いている人は普通免許+普通二種ですが、この条件でも「けん引二種」を受験することができるのです。
しかし、運転免許センターで受験する際の試験車両は大型トレーラーを使用するので、大型免許+けん引の練習をしていないと受かることが難しい上に、仮に合格しても、実際の路上では大型車両を運転できないという状態になります。(もちろん普通車で750kg以上の車両をけん引することはできます)
なので、現実的には大型免許+けん引免許を取得してから、けん引二種を取得することになります。
けん引二種の取得方法
けん引二種は教習所で取得できないため、都道府県の運転免許センターで実技試験を受けて合格する必要があります。
しかし、実際に使用する車両は大型車+トレーラーと、けん引免許(一種)車両と同じものです。
技能試験内容もほぼ同じで、異なるのは合格点が一種では70点だったのが二種では80点になり、10点分厳しくなります。
それでも、いきなり実技試験を受けて合格するのは難しく、教習所で練習してから受験するのが一般的です。
大型特殊二種免許
世の中には大型特殊免許の二種免許があります。
大型特殊といえばブルドーザー、ブルドーザーに旅客を乗せるの??と普通は思いますよね。
そう考えるとイメージし辛いのですが、スキー場などで客を山の上まで輸送する際に使う「旅客雪上車」の運転には大型特殊二種が必要です。
…とは言われていますが、かつては公道上の積雪でも雪上車で旅客運転するために路線登録(緑ナンバー)していた車両がありましたが、今ではほとんど無くなりました。
スキー場内であれば私道なので大型特殊、二種免許の要件はありませんね。
ということで、今では使い道がほとんど無い免許の一つです。
大型特殊二種の取得方法
大型特殊二種も教習所で取得できないため、免許センターで技能試験を受ける必要があります。
技能試験内容も大型特殊一種と同じで、異なるのは合格点が一種では70点だったのが二種では80点になり、10点分厳しくなります。
大型特殊一種よりも丁寧で正確な運転が求められる、というところでしょうか。
けん引二種も大型特殊二種も、技能試験の違いは合格点のみであり、過去には二種受験者が一種受験と勘違いされて、一旦は合格と告げられた(70点以上)ものの、二種受験であることがわかり合格が取り消された(80点未満だった)こともあったようです。
そのぐらいの違いしかない、ということですね。
ちなみに、Yahoo!知恵袋に「けん引免許一種と二種の違いを教えてください。」という質問に対して下記のような回答がありました。
けん引一種は俗に言うトレーラーです。
けん引二種は、旅客機などを乗客が飛行機から降りる所までけん引きする車を運転する事が出来る免許です。
私の友達が持っています(普通の会社員ですが、親戚に警察のお偉いさんがいて特別に取らせてくれたそうです。嘘じゃありませんが、練習も全くなし、試験もなしです)。
引用:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1111260861
「旅客機などを乗客が飛行機から降りる所までけん引きする車」とは恐らくトーイングカーのことを指していると思われますが、空港内は公道ではないので道路交通法が適用されず、けん引二種免許は要件ではありません。
空港のグランドハンドリングを請け負っている会社が、独自にトーイングカーやトーイングトラクターの運転資格を規定して運用しているのが現状です。
しかも、友人が親戚の警察のお偉いさんがいて、試験なしで特別に取らせてくれた、というのも噴飯物ですね。もしこれが事実なら自民党の裏金問題以上の大問題ですよ。
こういうところがYahoo!ゴミ袋と揶揄される所以ですね。
使い道の無い免許を取得する理由は…
使い道が無いのに免許を取得する理由の大半は、運転免許マニアがフルビット免許を達成するため。と言われています。
フルビット免許については、以前この記事で触れています。
連結バスの運転にはけん引二種免許は不要?
ただ、よくわからないのは、最近増えている連結バスの運転にはけん引二種は必要なく、大型二種で運転できるのだそうです。
最近は都内でも見かけるようになりましたね。
これは、連結バスの2両目が「けん引されることを前提として作られていないから」なのだそうです。
例えば、上の画像にあるような日の出町で運用されていたバスは、客車がけん引される構造になっていますが、連結バスは1両目と2両目が連結されており、車内の行き来が可能な構造になっています。
だから大型二種免許でOKなのだそうです。
…って、道交法の解釈ではそうなのかもしれませんが、車両の運転特性は大型トレーラーに近いでしょうから、これこそ「けん引」の定義を変更して、連結バスの運転には「けん引二種免許」を要件にすべきだと思いますけどね。
現に連結バスを運用しているバス会社では、運転士にけん引一種免許の取得を指導しているところもあるようですから、実際に運用している会社が、連結バスの運転特性がトレーラーに近いことを認識しているという証左でしょう。
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