改正道路交通法の施行期日に関する政令が、2022年12月20日に閣議決定されました。
この閣議決定により、2023年4月1日から自転車に乗る際にはヘルメットの着用が努力義務化されます。
今回はこの道交法改正について解説します。
改正道路交通法の概要
実は以前から、保護者は13歳未満の子供にはヘルメットを着用させるよう努めなければならない、と年齢限定の努力義務が課されていました。
道路交通法第63条11項から引用します。
道路交通法
(児童又は幼児を保護する責任のある者の遵守事項)
第六十三条の十一 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
引用:https://elaws.e-gov.go.jp/
上記の条文が、令和5(2023)年4月1日以降、以下に変わります。
第1項
自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。第2項
自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。第3項
児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
引用:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/helmet.html
今までは、13歳未満の子供にヘルメットを着用させるよう努めなければならない、といった保護者に対する努力義務でしたが、4/1以降は、自転車に乗る全ての人に対してヘルメットの着用が義務化されます。
罰則規定がありませんから、ヘルメットを被らないことで直ちに摘発されることはありません。
本改正の背景
この道交法改正の背景には、自転車乗車中の事故で死亡した人のおよそ6割近くが頭部損傷によることがわかり、ヘルメットを着用していない場合、着用していた人にくらべて死傷率が2.2倍も高くなるということが挙げられます。
しかし、手軽で利便性の高い自転車で、努力義務とは言え、ヘルメット着用が義務化されることには、賛否の声が相次いでいます。
確かに、自転車にはヘルメットホルダーとかありませんからね。
やや先走った印象がある
今回の道交法改正は、自転車利用者の安全のため、という背景は十分理解できますが、反面、「そこまで行政が踏み込むことなのかな?」という想いもあります。
自転車は戦前からある、市民にとっては安価で便利なモビリティです。
1970~90年代は、今よりも多くの自転車が走っており、駅周辺の放置自転車は今とは比べものにならないぐらい多いものでした。
引用:経産省HP:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20210728hitokoto.html
事実、自転車の出荷金額は1992年をピークに徐々に減少し、現在はピーク時の半分以下です。
一方、自転車の死傷者数はと言いますと、
引用:国土交通省HP:https://www.mlit.go.jp/road/road/bicycle/pdf/001.pdf
平成4年の1,178人をピークに、平成31年には433人と、半分以下に減少しています。
もちろん、この間に警察による交通安全指導や各省庁による啓蒙活動の努力があったとは思いますが、一番の減少要因は自転車利用者の減少によるものであることが販売金額の減少から読み取れます。
自転車利用者に問われているのは運転マナー
今、自転車利用者が批判にさらされているのは、その運転マナーです。
近年、特にこういった自転車側の過失がクローズアップされるのは、「車 対 自転車」の事故では、いくら自転車側に過失があったとしても、車側の過失も問われるからだと思います。
どう見ても自転車の運転が悪いのに、事故の過失割合で車側が多めに付けられてしまうことに納得できない人が多く、その声がネットで見えやすくなってきたのではないでしょうか。
今まで、ヘルメット着用義務化せずとも自転車販売数の自然減によって死者数を減らしてきました。
これからの日本は人口が減少していくことは明らかなので、今やるべきことは、ヘルメットの着用義務化ではなく、自転車の交通指導の徹底ではないでしょうか。
などの行政指導が先のように思います。
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