
僕は16歳で初めて原付免許を取得してから、もう30年以上もバイクに乗っているが、幸いにも今まで歩行者/自転車/自動車との接触事故を起こしたことがない。
僕が今まで事故を起こさなかったのは単に運が良かっただけではない。
無事故を継続してこれたのには、それなりの理由がある。
今回は、僕が今まで実践してきた事故を遠ざける運転技術について紹介したい。
「敵を知りて己を知れば百戦危うからず」である。
バイクが起こしやすい事故
一般道路でバイクが起こしやすい事故には特徴がある。
以下はバイクが起こしやすい事故トップ3だ。
1.渋滞中の路肩を走行して、対向する右折車との衝突

渋滞の車列の左側をすり抜けしているときに、対向車線から右折する車と衝突するケースだ。
上の図の「商業施設」は、ガソリンスタンド、ファミレス、パチンコ屋などをイメージするとわかりやすい。
特に、原付や250cc以下の小型バイクに乗っている者に多い事故だが、経験豊富なライダーはまず遭わない事故である。
なぜなら、
ということを経験的に知っているからだ。
未熟なライダーは急いでいようが急いでいまいが、いつも当たり前のようにすり抜けをする。
急いでいないのに路肩走行するのは、自ら事故リスクを増やしているようなものだ。
すり抜けするときでも徐行していれば突然の右折車と鉢合わせしても対処できるし、万が一ぶつかっても死亡事故のような大事故には至らないだろう。
それと3つめの、渋滞の車列が切れているところには
・歩行者/自転車を渡すために止まっているのかもしれない
ということを経験的に知っている。
だから経験豊富なライダーは路肩を走る場合でも車列が切れている手前ではいつでも止まれるように減速する。
しかし未熟なライダーは車列が切れている理由を考えずに通過して右折車と衝突するのだ。
最近の125ccスクーターは、かつての50ccスクーターのように隙間さえあれば、追い越しすり抜けなんでもアリで我がもの顔で走り回る。
果樹の害虫になぞらえて「桃バエ」などと呼ばれてしまう。
2.左折車による巻き込み事故
さすがに交差点内で左折しようとする車の左側を走るライダーは(たとえ初心者ライダーでも)いないが、渋滞中に路肩を走っていて左折車に巻き込まれるケースはよくある。
動かない渋滞車列であれば、対向車線からの右折車に気をつけたら良いのだが、車列が動き出すと車が突然左折するかもしれないというリスクが急激に高まる。
上の動画の2:34のあたりを見てほしい。
渋滞がゆっくり動いている車列の路肩をバイクが走っているのだが、ガソリンスタンドに入るトラックに危うく巻き込まれそうになっている。(ヒヤリハット)
経験豊富なライダーは、こういったことに巻き込まれるリスクが高くなることを知っているので、渋滞車列が動き出したらすぐに車列に戻って流れに乗る。
3.自動車のミラーの死角に入り、車線変更で衝突する
2車線の道路で、車の左後方(もしくは右後方)にいると、自動車からはミラーの死角に入ってしまい二輪車の存在がわからない。

通常、ドアミラーとバックミラーだけでは黄色の部分しか視認できない。
横方向を目視できたとしても、左右から後ろ45°ぐらいまでの間に死角ができてしまう。
図の赤い範囲(死角)にバイクがいると車からは見えないため、もし車が左車線に車線変更するときに接触する危険性がある。
これは一義的には自動車側の安全確認不足だが、二輪車側でも死角に入らないようにすることで避けられる事故である。
僕はこの位置に自分が入っているのが感覚的に気持ちが悪いので、車間をずらして死角に入らないようにしている。
自転車は漕ぎ出しが危ない
自転車は漕ぎ出しが一番不安定な乗り物だ。
特に子供を乗せている母親や中年~年寄りに多いのだが、漕ぎ出し時にふらついて車道側に出てくる場合がある。
よく漕ぎ初めの自転車の横を車やバイクで通過するときに、車両の前に一瞬フラフラ~っと出てきて心臓が縮んだことはないだろうか。
もし商店街などを通過しているときに前に漕ぎ出しそうな自転車がいたら、速度を十分落として通過するか、自転車との間隔を大きく取って、万が一車道側にふらついても回避できる距離を取るようにする。
タクシーには要注意
タクシーの後ろも要注意だ。
大体のタクシードライバーは周囲の交通に注意を払って安全運転に努めているが、それでも道端でタクシーに手を挙げている客がいれば、安全よりも売上のほうが優先されてしまう。
そのため、タクシーの後ろを走るときは、
・車間距離を取る
・死角に絶対に入らない
という対処が必要である。
特に、前を走っているタクシーが実車(客を乗せている)であれば、もしかすると急に止まるかもしれない、といった予測ができるし、空車であれば道端で手を挙げている者がいれば即座に止まるかもしれない、といった予測が立つ。
いずれにせよ、動いているタクシーの左側を追い抜くのは危険だ。
そのため、タクシーの後ろを走るときは、タクシーがどんな挙動をしても対応できるように車間距離をいつもより広めに取るようにしている。
道路を走るという行為は、自分が主人公のシューティングゲームだと考えよう
よく子供のとき「横断歩道の白い部分の外は海!落ちたら死ぬ!」って遊びはしなかったか。(自分だけか)
横断歩道の白いペイントの部分だけ踏むようにして、それ以外を踏んだら落ちる(ことにする)、ってやつだ。
僕は車やバイクで走るときは、自分以外は全部敵のシューティングゲームだと考えるようにしている。
シューティングゲームと言っても攻撃できないゲームで、並んで歩く歩行者や、信号無視する自転車、右側を逆走してくる自転車などにぶつからずにクリアする「ゲーム」だ。
ゲームだから、いつどこから歩行者や自転車が飛び出てくるかわからない。
当たったら一発でゲームオーバーとなるかなりシビアなゲームである。
そう考えると、ボケーっと商店街を通行することはできず、常に不意の事態に備えて走行するようになり、結果的に事故を呼び込まない運転になっていく。
自分で防げない事故のために任意保険がある
・車の死角に入らない(左右後ろ45°ぐらいが死角)
・自転車は漕ぎ出しが不安定なので十分な間隔を取って通行する
確かに、自分で防げない事故はある。
例えば停車中に後ろから追突されたり、青信号で交差点を通過中に信号無視の車が横から突っ込んできたりといったことは可能性として有り得ることだ。
しかしそういった事故に遭遇する確率はかなり低く、むしろ多くの事故はライダーの慢心に起因するものがほとんどである。
ベテランライダーほど路肩走行やすり抜けをしないのは、ただ優等生だからなのではなく、リスクとリターンが割に合わないことを知っているからだ。
交差点の度に車列を縫うようにすり抜けして先頭に出てスタートダッシュ~また次の交差点で同じことを繰り返す、ということをやっても、到着地にたった数分早く着くだけである。
親の死に目に会うために一分一秒を急いでいるのならまだしも、たった数分早く到着するだけのためにリスクを取って命を削るのは割に合わないと思わないだろうか。
僕が30年以上無事故で過ごせたのは、今回紹介した内容を実践してきた成果だと思うが、ただ今後も確実に無事故で過ごせるかと言えばそれは別の話だ。
自分で防げない事故をカバーするために任意保険がある。

バイクの保険は基本掛け捨てなので、毎年相見積もりを取ったほうが保険料を節約できる。



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