意外と皆さん
と思っている人が多いんですよね。
結構有名なWebメディアでも「PSCマークが付いていないと違反になる」と書いてるところもあって、ちょっとビックリしました。
改めて、今回は乗車用ヘルメットの要件を整理してみたいと思います。
認定品でないヘルメットでも違反ではない
実はバイクのヘルメットって、別に認定品じゃなくてもいいんですよ、法律上は。
道路交通法第71条で乗車用ヘルメットの着用義務が明記されていますが、ではどんなヘルメットを着用しなければならないのか?については、道交法71条の7項で「内閣府令で定める」とあります。
この「内閣府令」は道路交通法施行規則のこと指し、以下のように定められています。
(乗車用ヘルメット)
第九条の五 法第七十一条の四第一項及び第二項の乗車用ヘルメットの基準は、次の各号に定めるとおりとする。
一 左右、上下の視野が十分とれること。
二 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
三 著しく聴力を損ねない構造であること。
四 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
五 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
六 重量が二キログラム以下であること。
七 人体を傷つけるおそれがある構造でないこと。
http://elaws.e-gov.go.jp/
乗車用ヘルメットの要件はこの1~7項が全てです。
別に規格品じゃないとダメとか認定品じゃないと違反、なんて一切書いていません。
この1~7項を満たすものであれば、工事用ヘルメットだろうが、野球のヘルメットに顎紐つけたものだろうが、何だったら、鍋の内側にバスタオル詰めて、取っ手と取っ手の間を紐で結んでもいいわけです。
こう言うと
という人がいるのですが、明らかに販売側に帯する規制と道交法を混同しています。
消費生活用製品安全法と道路交通法は別の法律
消費生活用製品安全法とは、消費者の生命や身体に危害を及ぼす恐れのある製品の製造や販売を規制し、製品の安全性確保を目的とした法律です。
乗車用ヘルメットはこの法律の規制対象製品で、製造・輸入業者など事業者に対してはこの規制をクリアしたことを示すPSCマークの表示を義務づけています。
規制対象品でPSCマークを付けていない製品を販売することは、この法律で禁じられています。
しかし、この法律は販売者側を規制する法律であって、PSCマークが付いていない製品を使う消費者を規制するものではありません。
例えば、海外のECサイトでPSCマークのないヘルメットを購入して、日本で使用しても消費者は一切罪に問われません。
このことを混同して
という人がいるのでしょう。
ちなみにSGマークはSafe Goods(安全な製品)の略で、(財)製品安全協会が定めたものです。
生命や身体に対して危害を与える恐れのある製品について、安全な製品としての基準を満たしていると認められた製品に表示されるマークですが、法律で定められたものではありません。
あくまでも消費者が、その製品を購入・使用するにあたって安全な製品かどうかを判断するために(財)製品安全協会がお墨付きを与えたものに過ぎません。
消費者は製品にPSCマークがあることで、一定の安全性が確保された製品であることを認識できるようにしているわけです。
PSCマークは、あくまでも製品を販売する側に課された制約であり、PSCマークが無い製品を使用しただけで、消費者を罰することは出来ないのです。
乗車用ヘルメットに関する誤解
乗車用ヘルメットに関して、ネット上にはこんなQAがあります。
PSCマーク、SGマークの無いヘルメットを被っていたら違反キップを切られますか?
上にも書いたように、道路交通法施行規則の乗車用ヘルメットの要件には「PSCマーク」「SGマーク」の要件がないので、これらのマークが付いていないヘルメットで運転していたからと言って違反にはなりません。
もし現場の警察官が乗車用ヘルメットの要件を知らずに違反キップを切ったのであれば、処分撤回を求めて公安委員会に不服申し立てや審査請求が出来ます。
「反則金も払っちゃったし面倒臭いからいいや」
と思うなら仕方ありませんが、個人的には面白い事案(笑)なので公安委員会に審査請求するでしょうね。
PSCマーク、SGマークの無いヘルメットで運転中に事故を起こした場合、保険が下りないのでは?
これもよく言われますよね。
実際のところどうなのか、僕が加入している任意保険(バイク)の契約約款を見てみると「保険金をお支払いしない場合」には、このように書いてあります。
まあ、これは保険金が支払われなくて当然ですね。
ヘルメット絡みのケースはここに含まれると思います。
ヘルメットを着用せずに事故を起こした場合は、普通に解釈すれば「保険契約者または被保険契約者の故意・重大な過失」に当たると思いますので、保険金が支払われない可能性があります。
一方、PSCマークやSGマークが無い非認定品を着用していた場合はどうなるでしょうか?
推測になりますが、ヘルメット着用の義務があることを認識しており、非認定品とは言え、道交法施行規則に準じたヘルメットを装着していたのであれば、保険会社は保険金の支払いを拒めないのではないでしょうか。
なんて言われたら「それって約款のどこに書いてありますか?」と反論しますよね。
「PSCマーク、SGマークが無いヘルメットを着用していた事故には保険金のお支払いはできません」という約款の保険なら補償されませんが、きっとそんな保険は無いんじゃないでしょうか。
ちなみに、改造車のケースもここに該当します。
運転に支障が出るような著しい改造を行った車両で事故を起こした場合、「保険契約者または被保険契約者の故意・重大な過失により生じた事故による損害または傷害」に該当すると判断されれば、保険金が支払われません。
逆に、改造の程度が車検が通る範囲であれば「故意・重大な過失」には当たらないでしょう。
(財)製品安全協会のサイトには工事用ヘルメットで自転車に使うなと書いてありますが?
(財)製品安全協会のサイトのFAQにはこんなQAがあります。
A7:産業用ヘルメットで自転車用ヘルメットを代替することはできません。産業用ヘルメットは、上から落下してくるものに対して防護するための製品ですが、自転車用ヘルメットは、転倒時に頭部が路面やガードレールなどに衝突する際の衝撃を緩和するためのもので、設計が異なります。自転車に乗車時は、SGマーク付きの自転車用ヘルメットを着用してください。
そりゃそうですよね。私もまったく同感です。
製品安全協会の立場ではそう言いますよね。
でも、産業用ヘルメットが道路交通法の施行規則の1~7項を満足するのであれば、道交法には違反しませんよね。
安全であるかどうかと、法律は別ってことです。
法律論と感情は分けて考えよう
ネットで感情的になっている人達は、運転者への規制と販売者への規制を混同しています。
道路交通法で着用すべきヘルメットが規定されている。(道路交通法施行規則)
消費生活用製品安全法で販売できるヘルメットが規定されている。(PSCマーク必須)
そのため、運転者はPSCマークが無いヘルメットでも、道路交通法施行規則の1~7項を満たすヘルメットであればPSCマークが無いものでも違反にはなりません。
ただし、別の記事でも言及していますが、法律に違反していないこととライダーの安全は別物です。
実際に事故に遭遇するリスクを考えれば、JIS規格やスネル規格に対応したヘルメット、PSCマーク、SGマークが付与されたヘルメットを使うべきでしょう。
僕もバイクに乗るときは、AraiやSHOEIのJIS規格を使用しています。
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