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ビッグモーター事件、なぜ社内パワハラは防げなかったのか?

この記事は約6分で読めます。

いやー、やってますね、ビッグモーター。

以前からエグい買取り方がネットで噂されていましたが、ここに来て悪事が暴露されて大問題に発展しています。

詐欺まがいの保険金請求や保険会社との癒着、経営幹部によるパワハラなど、問題の原因は多岐にわたりますが、それらは既にメディアに糾弾されていますので、ここでは言及しません。

今回、多くのメディアや識者が言わない、真の原因について語りたいと思います。

ビッグモーター不祥事の概要

今回の問題を簡単に整理します。

・売上を稼ぐために、事故修理の内容を不正請求(水増し)。
・事故修理の際、保険会社(損保ジャパン)からビッグモーターを紹介。
・経営幹部によるパワハラが横行

事故修理の際、ドライバーやゴルフボールで傷・凹みを増やして修理金額を水増ししたり、その手口などが修理部門で共有されていたことが暴露されるなど、売上を増やすためには不正も厭わない企業体質が批判の的になっています。

その背景には、ビッグモーターの過度な成果主義があり、特に、元副社長をトップとした経営幹部によるパワーハラスメントが背景にあることが浮き彫りになってきました。

国交省は実態を把握するため幹部への聴取、34店舗への一斉立ち入り検査を実施。

消費者庁は内部通報制度の運用実態の調査に乗り出し、金融庁は損保7社に対して報告徴求命令を出すなど、実態解明に向けた捜査が進められています。

このままいくと、ビッグモーターの民間車検場の資格取り消し、保険取扱業務停止となり、事実上、中古車会社として事業を継続することは困難になると思われます。

問題の本質

不正の一次的な原因は、経営幹部によるパワハラの横行や、それに伴う企業ガバナンスが出来ていないことが指摘されていますが、なぜパワハラや企業統治の欠如が起きたのか、ということまで言及するメディアはほとんどありません。

多くのマスメディアが不思議と指摘しないこと、それは、

日本の雇用環境がこういった問題を起こす一因になっている

ということ。

その理由を解説していきます。

なぜ日本の雇用環境が問題なのか?

日本は労働者を一度雇用すると、よほどの理由が無い限り解雇することができません。

整理解雇するには解雇の4要件を満たす必要があります。

<整理解雇の4要件>
1.人員整理の必要性
2.解雇回避努力義務の履行
3.被解雇者選定の合理性
4.解雇手続きの妥当性

今までの労働裁判の判例から、日本ではこれら4要件を満たさないと従業員を解雇できません。

そのため、日本は事実上、終身雇用と言われているわけです。

この「実質的な終身雇用」は、人材の流動性が低いため、いざ転職しようと思っても転職先が見つけづらいという負の面があります。

一方、海外ではこういった要件が緩い国が多く、特にアメリカなどでは、雇用契約は会社・労働者双方の自由意志によって締結され、理由を問わずいつでも契約を打ち切ることができます。

雇用流動性が低い社会は転職しづらい

日本は解雇規制が厳しいこともありますが、長く勤めるほどインセンティブを得られるような賃金体系になっています。

例えば、退職金制度なんかそうですよね。

勤続年数が少ない内に退職すると退職金はほとんど出ませんが、20年以上勤めると急激に退職金支給カーブが上がる会社は少なくありません。

つまり退職金を人質にして、会社に縛り付けているわけです。

こういった社会では、1社に長く勤めるほうが金銭的に有利ですから、多少会社に理不尽な扱いを受けても転職しようとは考えません。

こういった考えが主流だと、労働市場での人材流動が少ないため、転職先が見つけづらくなります。

クビになりやすい社会は次も見つけやすい

海外企業の、いつでもすぐにクビにされる可能性がある、というのは確かに不安ではあるし、実際に急にレイオフされると結構ショックです。

しかしその反面、他社も頻繁に解雇~募集していますから、次の仕事を見つけやすい、というメリットもあります。

同じ業界で転職していると、以前一緒に働いていた同僚から

俺、今○○にいるんだけど君××やってなかったっけ?ウチで△△のポジション募集してるんだけど来ない?

みたいな話がポロポロきます。

横の繋がりが広くなるんですよね。

そういうネットワークが拡がってくると、

いつクビになってもなんとか食っていけるな、俺。

みたいな感じになります。

もちろん、1社で安定的なポジションを得られるのも魅力的ですが、その代わりにやりたくない仕事をやらされたり、低い給与に我慢するぐらいなら、どんどん転職して自分に合う職場に移ったほうが精神的にかなり楽です。

欧米にはブラック企業が無い?

この記事で一番言いたいところがここです。

ビッグモーターの不祥事の一番の問題は経営幹部によるパワハラですが、不祥事を拡大させた原因の一つは、従業員が目標を達成するために不正に手を染めざるを得なかったということ。

これがアメリカだったら、「こんなことやってらんねぇ」と言って辞める人がほとんどでしょう。

「不正に手を染めないと達成できない目標」なんてやる価値ありませんし、そんなリスキーなことをやるぐらいならさっさと転職して、そんな目標を与えた幹部を訴えたほうがいいです。

奴隷のようにこき使われる前にみんな辞めてしまいますから、経営陣もパワハラしようがない。

理不尽なことがあっても、日本では「退職する」という選択がし辛いのは、すぐに転職先が見つからない、転職に時間がかかる、という雇用流動性の低い労働市場が問題なのです。

そのため、多くの労働者は多少理不尽なことを言われても我慢して耐えようとしてしまいます。

そういった考え方をせざるを得ない日本の雇用環境が、ビッグモーターの不祥事を拡大させた、とも言えます。

給料が上がらないのも解雇規制が原因

個人的には、日本の給与が上がらないのは、過度に労働者が保護されている解雇規制が原因だと考えています。

日本では、不要な人材を解雇しようにも解雇の4要件に合致しないと解雇できません。

昇給は抑えつつも、定年まで給料を払わなければなりません。

当然そのコストを積まなければならないため、従業員の給料に反映できないというパラドックスに陥ります。

働かない人の給料をみんなで支える、という構図です。

雇用流動性の高い社会では、人材獲得に競争が働くので、転職する毎に給料が上がっていきます。

もちろんそれに見合わないパフォーマンスだと解雇されちゃいますが。

多くの企業不祥事はパワハラに起因する

オリンパスの巨額粉飾事件や東芝の粉飾決算(なぜか報道では不正決算)も、その原因は経営陣による過大なノルマ押し付けによって現場が不正に手を染めたという構図です。

押し付けられたほうも不正なのはわかっていながらも、現在の生活、住宅ローン、子供の進学などいろんなことを考えると、退職を選択することができなかった、という側面があったのではないかと思います。

「簡単に辞めてすぐに次の職場が見つかる社会」であれば、全てのパワハラが無くなるとは言いませんが、少なくとも今よりはブラック企業は少なくなるでしょう。

解雇規制の緩和には課題が多い

雇用流動性の高い社会は、理不尽なことやコンプライアンス違反を強要されても「退職する」という選択をしやすくなるので、労働市場全体でブラック企業を淘汰する方向に作用します。

今、日本社会はジョブ型雇用への転換を迫られており、ジョブ型雇用を実現するためには解雇規制の緩和、金銭的解雇の整備が急務です。

しかし多くの労働者、特に正社員や公務員は、

解雇規制の緩和?クビにされやすくなるなんて冗談じゃ無い!

と忌避感を強くすると思います。

そりゃそうですよね。

ある意味、今まで保護されてきた権利が無くなる話ですがら、すんなりと同意できる人はそう多くありません。

そう考えると、日本の終身雇用の根は意外と深く、これからもコンプライアンス違反の企業不祥事が減ることはなさそう、というのが僕の予想です。

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