車に乗っていると、いくら気をつけてもほんのちょっとぶつけてしまったり、小さなキズなどが出来てしまいますよね。
もちろん板金屋さんにお願いすればキレイに修理してくれますが、その半面お金もけっこう掛かります。
カー用品店の塗料コーナーによくある補修材メーカーのプロモーションビデオを見ていると、なんとなく「自分でも修理できそうじゃね?」って思いませんか?
でもちょっと待って下さい。
誰も言わないので僕がいいますが、車の板金塗装って、少し手先が器用なぐらいではまともな仕上がりにはなりません。
そもそも素人が簡単にDIYできたら、街の板金屋さんは仕事無くなっちゃいますよね。
今回はそんな板金塗装の難しさについてお伝えしたいと思います。
僕が板金塗装のDIYをオススメしない理由
自分で言うのもなんですが、僕はわりと手先は器用な方なので大概の作業は自分でやってしまうことが多いです。
ブレーキキャリパーのオーバーホール、立ちゴケで割れたカウルの修復、リモコンドアロックのアンサーバック回路の自作などもやったことがあります。
そんな僕でも唯一挫折したのが車の板金塗装。
以前、バイクのカウル修理でパテ盛り~水研ぎ~塗装と一連の修復作業をやったときは意外と上手に出来たので、車のボディ修復もその延長線で出来るだろうと思ったんですね。
でもやってみると板金塗装ってかなり難易度が高い作業であることがわかります。
ヘコんだところにパテを盛るだけじゃダメ
板金修理の動画を見ると、ヘコんだところにパテを盛って水研ぎして凹み部をキレイに消していますが、これで直せるのはキレイにヘコんだところだけなんです。
どういうことかというと、
このようにボディ平面より下にヘコんでいる場合はパテをキレイに盛れば修理がラクなんですが、ぶつけ方によっては、周囲がボディ平面より盛り上がってしまうケースがあるんです。
この状態でパテを盛ると
こうなってしまいます。この状態で耐水ペーパーで水研ぎすると
このようにボディ面と平面に仕上がらないのです。
この記事のトップ画像のヘコみ方がまさにそうです。
このように凹み面の端が盛り上がるのは、ぶつかったときの応力に逃げ場が無くて、ボディ鋼板が表側に膨らんでしまったんですね。
この場合は一度凹み部を引っ張るか後ろから叩いて下処理をしないとパテ盛りできません。
ちなみに凹み部を引っ張るとはこんな感じの作業です。
車好きの人はチャレンジしがいのある作業ですが、そうでない人にはとても手が出ない作業です。
これだけのために道具を揃えるのも大変ですしね。
パテ盛りは意外と難しい
ヘコみがそんなに大きくないのであればパテで埋めて平面を出せばいいのですが、今度はパテ盛りの難易度にブチ当たります。
「凹んだ部分にパテを盛って他の面と均一になるようにすればいいんでしょ?」と思っていると絶対に失敗します。
パテを盛るのは、ただこんもり盛ればいいわけではありません。
空気や水分が入らないようにパテを盛るのは意外と難しく、スキルが必要な作業なんです。
パテに気泡が入ったままパテ盛りすると、水研ぎしたときに気泡が出てきてボディに小さい穴が出来てしまいます。当然、穴の空いたところには塗料が入りませんので仕上がりが悪くなります。
またパテに水分が入るとパテ内部の水分が蒸発して気泡になり、ブリスターといって塗膜に膨らみが生じてしまいます。
ブリスターは修理してもすぐに症状が出てこなくて、修理後数ヶ月経過してから膨らみが出てくるので厄介です。
パテ痩せ
あまりパテを厚く盛ってしまうと、パテが硬化するときに体積が縮んでしまう、いわゆる「パテ痩せ」という症状が出ます。
上の動画で「このぐらいのヘコみであればパテで埋めてしまえばいいのに」と思った方も多いのではないでしょうか?(僕もそうでした)
しかしパテは硬化するときに縮む性質があり、パテの量が多ければ多いほどその縮み量は多くなります。
板金のプロがなるべく板金の段階で元の形に近づけるようにするのは、パテ盛りの厚さをなるだけ少なくなるようにするためで、それはパテ痩せを回避するためなんです。
野外で塗装すると仕上がりがガッタガタになる
これが一番の問題なんですけど、普通の人は自宅に塗装ブースなんか持ってませんよね。
そうなると自宅の駐車場、多くの人は野外で塗装することになりますが、野外で塗装すると十中八九失敗します。
まず大敵なのが風。
無風だと思っていても、野外では思ったより風があります。例えそよ風でも風がある日はスプレーした霧が流れてキレイな塗膜が作れません。
また仮に無風の日に作業出来たとしても、乾燥待ちの間に自宅前を車が通ったりすると、その走行風でゴミが巻き上げられて塗膜にゴミが乗りまくるんです。
野外ではどんなに頑張ってもキレイな仕上がりにならないんです。
仕上がりに品質を求めない、バンパー下とかドアパネルの下とかだったらいいですけどね。
補修材メーカーの解説動画はわかりやすいけど…
ホームセンターやカー用品店の塗料コーナーにある補修材メーカーの動画を見ると、なんとなく自分でもできそうな感じがしますよね。
確かに丁寧でわかりやすく説明していますが、そもそもこの動画は外部の天候の影響を受けない屋内の作業場で撮影されています。
上でも言いましたが、塗装には風やゴミが大敵なので屋内での作業場所が確保できないと、まず満足のいく仕上がりにはなりません。
自宅に屋内ガレージがあって、これから自分で板金塗装もできるように経験を積みたい!という人はDIYにチャレンジしてもいいですが、車はあくまでも生活や趣味のツールであって、メンテナンスにそこまで時間とコストを掛けられないという人はプロに依頼したほうが結果的に安くキレイに仕上がります。
板金塗装DIYのまとめ
・野外で塗装するとまず満足の行く仕上がりにならない
・補修材メーカーの動画を見てチャレンジするなら屋内ガレージで
・結局、プロに頼んだほうが安くて早くてキレイに仕上がる
独身時代、アパートの前に止めていた僕のクルマがコインでキズ付けられたことがあったんです。フロントフェンダーからフロントドア、リアドア、リアフェンダーまでガーっと。
キズを見るとボディ下地まで届いていないので、自分でも修理できるんじゃないかと思ってやってみたら、これがまた難しいのなんのって、結局塗装面がガタガタになってギブアップしました。
補修をお願いした板金屋さんに「おー、なんか色々頑張りましたねー(苦笑)」と言われたときの恥ずかしさは今でも忘れません。最初から持っていけばよかった。
…ということで、板金塗装の修理経験が無かったら素直にプロに頼んだほうが早くて結果的にコストも安く済むよ、って話でした。
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