タイヤの扁平率(へんぺいりつ)って知ってますか?
タイヤサイズって太さだけが注目されますが、実はこの扁平率も車の性能に大きく関わってきます。
今回はこの扁平率についてやさしく解説したいと思います。
タイヤの扁平率とは
扁平(へんぺい)って「のっぺり、平ら」という意味で普段そんなに使う言葉じゃないですよね。
日常生活だと”扁平足”(へんぺいそく)ぐらいじゃないでしょうか。
タイヤの世界では、タイヤの厚さ(ホイールリムからタイヤ外周までの距離)をタイヤ幅で割った値を”扁平率”と言います。
赤矢印の部分がタイヤの厚さで、タイヤ幅に対する割合が扁平率です。
わが家の車のタイヤサイズは195/65/R14で、これは「タイヤ幅が195mm、扁平率65%、ホイールサイズが14インチ」という意味です。
タイヤの幅に対してタイヤの厚み(サイドウォール)の割合を扁平率と呼んでるんですね。
なので写真の赤矢印の長さは
になります。
扁平率50%のタイヤは、タイヤ幅:サイドウォール長さが1:0.5ということです。
つまりこの扁平率が低いほど、タイヤの接地面積が大きくなってサイドウォール部が薄くなります。
扁平率ってなぜいろんな種類があるの?
車の能力をより発揮できるように、その用途に応じていろんな扁平率があります。
扁平率が低いとどうなるの?
一般的に、スポーティーな走りを重視する車に装着されるタイヤは扁平率が低い傾向にあります。
コーナリングのときに接地面積が大きいタイヤのほうがより路面にグリップしますし、荷重がかかってもタイヤがたわみづらいので路面の状況がドライバーにダイレクトに伝わってくるのでコントロールしやすくなります。
一方では、接地面積が大きいために走行抵抗が大きくなって燃費がやや悪くなったり、ロードノイズ(走行音)が大きいと言ったデメリットもあります。
スポーツカーや走りを売りにしている車種のタイヤは扁平率が55%以下であることが多いです。
低扁平率タイヤのことを「ロープロファイルタイヤ」と呼んだりもします。
プロファイルとは元々「輪郭、側面、特徴、特性」と言った意味があり、それから低扁平率タイヤのことを「ロー・プロファイル・タイヤ」と呼ばれています。
扁平率が高いとどうなるの?
逆に、スポーティーな走りを重視していないファミリーカーや実用車などのタイヤは扁平率が高い傾向にあります。
扁平率が高いということはタイヤがたわむ=クッション性が高いので、低扁平率タイヤに比べて乗り心地がいいです。
これはスポーツ性能とトレードオフの関係ですね。
扁平率が低いとたわみが少なく荷重に対して踏ん張りが効く反面、路面の凹凸をタイヤが吸収せずに車内に伝わってくるので乗り心地が悪いです。いわゆる「路面の突き上げによるゴツゴツ感」が大きいです。
一方、扁平率が高いと路面の凹凸をタイヤのたわみで吸収してくれるので、乗り心地がマイルドです。
つまりスポーツ性能を求める(扁平率低)と乗り心地が悪くなり、乗り心地を求める(扁平率高)とスポーツ性能を失うわけです。
世の中はスポーツカーよりも一般車のほうが多いので、扁平率が高い(60%以上)タイヤのほうが選択肢が多く価格も安いです。
扁平率の違いによるメリット/デメリットを表にするとこんな感じ。
メリット | デメリット | |
扁平率低い(タイヤが薄い) | ・グリップがよい ・路面の状況がダイレクトに伝わってくる ・ブレーキ感がよい | ・接地抵抗が大きくなる(燃費↓) ・ロードノイズが大きい ・乗り心地が悪い ・価格が高め |
扁平率高い(タイヤが厚い) | ・路面凹凸を吸収、乗り心地がいい ・ロードノイズ小さい ・価格が安価 | ・荷重がかかるとたわむ(カーブで踏ん張りが効かない)
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どんなときに扁平率を変えるの?
普通はタイヤ交換するときは純正タイヤと同じサイズのものを選べばいいのですが、あえて扁平率を変えるケースもあります。
スタッドレスタイヤを購入するとき
スポーツカーやツーリングワゴン系の車は扁平率が55~50%のタイヤを装着しているものが少なくありません。
低扁平率のスタッドレスタイヤは逆に雪道で踏ん張りが効かないので滑り出しが早くなります。ズルっと滑ると止まらない感じ。
そのため、雪道のスポーツ走行が目的でなければ、スタッドレスタイヤは扁平率60~70%のものを選んだほうが安心です。
当然ですが扁平率を上げると、今度はホイールサイズを下げる必要があります。(インチダウン)
ホイールサイズを変えずに扁平率を上げると、タイヤ外周が変わってしまうのでタイヤハウス内に入らなかったり、また装着できてもタイヤの外周が5mm以上変わると、スピードメータの誤差が大きくなってしまいます。(とは言ってもそのへんはお店のスタッフが気にかけてくれるので、そうそう間違ったタイヤ・ホイールサイズの選択にはならないと思います)
下の動画にインチアップとタイヤサイズの関係がわかりやすく解説してあります。(ダンロップ社)
仮に夏タイヤと同じサイズのスタッドレスタイヤを買うにしても、シーズン毎にタイヤをホイールに履き替えさせる手間を考えると、アルミホイール付きのセット品を購入したほうが取扱がラクです。
乗り心地を重視したいとき
レガシィやフォレスターなどのツーリングワゴン系でも、上位モデルになると225/55/R18といったタイヤサイズが標準装備されています。
ただ、購入したあとに「やっぱりスポーティーな走りをよりも乗り心地を重視したい」と感じるような場合は、ホイールをインチダウンして扁平率が60~65%のタイヤに履き替えることで、乗り心地を改善させることもできます。
この場合はアルミホイールも一緒に購入する必要がありますが、量販店にはタイヤとアルミホイールのセット品が多くありますので、店員さんに相談すると適切なタイヤサイズのアルミセットを予算に合わせて提案してくれます。
流通量の多いタイヤサイズに変えたいとき
車を買うときってあまりタイヤサイズのことは考えないと思いますが、いざタイヤ交換をしようと思ったとき、タイヤサイズが特殊だと選択肢が少なくて割高なタイヤを買わざるを得なくなってしまいます。
例えばウチの車はホンダ エアウェイブなのですが、タイヤサイズが195/65/R14という微妙に中途半端なサイズなんです。
これが185/70/R14とか185/60/R15とか、もしくは195/65/R15だと流通量が多いサイズなんですが、195/65/R14になると途端に種類が少なくなります。セールのときでもあんまり選択肢が無いんですよね。
195/65/R14 → 185/70/R14に変えると、タイヤの選択肢が広がって1本5,000円以下で入手できるようになったりします。
ドレスアップ
実はこれが一番多いかも。
完全に見た目の話なんですけど、タイヤハウス内にギリギリタイヤが入った状態でホイールサイズが大きいと見た目がスッキリしてします。こんな感じ。
つまりタイヤ外周を変えずにホイールサイズを大きくするということは扁平率を下げることに等しいわけです。
最近ではミニバンに低扁平率タイヤ+大径アルミホイールを装着したり、軽自動車でも低扁平率タイヤ+16インチホイール(!)を装着する車種もあったりします。
個人的にはミニバンに扁平率40%のタイヤを履かせたら乗り心地が悪くて大変じゃないかと心配しますが、どうなんでしょうね?
扁平率を変える場合の注意
タイヤの扁平率を変える場合に注意するポイントです。
道路の段差に要注意
低扁平率タイヤはタイヤ内の断面積が少ないため、道路の段差などに勢い良く乗ってしまうと、段差とホイールがぶつかってパンクやホイールが破損するケースがあります。
車のタイヤはほとんどがチューブレスタイヤなので、どちらかといえば段差がタイヤを突き抜けてホイールを歪ませてしまうほうが心配ですね。
ホイールが歪むとその修正には結構な費用がかかりますし、場合によっては修正出来ない場合もあります。
なので低扁平率タイヤで段差に乗り上げるときは細心の注意が必要です。
タイヤ外径に要注意
扁平率を変えたり、インチアップ/インチダウンしたときに、タイヤ外径が元のサイズの±5mmを超えると、スピードメーターの誤差が無視できなくなると言われています。
特に、車検時のスピードメータテストはプラス側の誤差については厳しいので、タイヤ外径が大きくなる方向だと注意が必要です。
例えば195/65/R14のタイヤ外径は609mmなのですが、ホイールサイズを変えずに扁平率を70%にすると185/70/R14でタイヤ外径が615mmとなりその差は+6mmになります。
実際の走行速度は以下の式で求められます。
上の式に当てはめると
となり、約1km/hほど実走行速度より速くなります。この程度なら許容範囲でしょう。
まとめ
かなりざっくりまとめると
・扁平率が高い→ファミリーカー、乗り心地重視の車向け
と覚えておくといいです。
基本、タイヤ交換は今装着しているタイヤと同じサイズのものを選ぶのが一番です。
ただし上でも書いたように乗り心地をもっと変えたいとか、在庫が多いタイヤサイズに変えたいというときは、タイヤの選び方に自信がなければ量販店のスタッフに相談するのがいいでしょう。
最近ではネット通販でタイヤを購入して自宅近くの取付店で交換する方法もメジャーになってきました。
ネット通販業者も最近はサポート電話窓口を用意しているところも多いので、インチアップ/ダウンについて不明なところがあれば電話でアドバイスしてもらえます。
タイヤをたくさん販売しているお店は、インチアップ/インチダウンするとタイヤ外周がどのくらい変わるのか?といったデータや、適応ホイールサイズと扁平率の関連をまとめたリストをもっているので、的確なアドバイスをしてくれます。
逆にインチアップ/インチダウンについて的確に答えられないスタッフは、ホイールサイズと扁平率の関係をよくわかっていないので、そういったお店での交換は避けるべきです。
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