※当サイトではアフィリエイト広告を利用しています

なぜ自動車のボディにはステンレスが使われないの?

この記事は約5分で読めます。

「ステンレス」と言えば、日常生活のあらゆるところに使われている金属素材ですよね。

部屋の中を見渡しても、目に見える金属のほとんどはステンレスだと思います。

ステンレスは、その名の通りstain(サビ)- less(~ない)で「錆びない金属」で、金属材料としては審美性、機能性に富む優れた材料なのです。

そんな万能素材であるステンレスですが、なぜか自動車のボディには採用されません。

錆びない素材なら自動車の外装に向いているものですが…。

今回は自動車のボディにステンレスが使われない理由を解説します。

自動車にステンレスが使われない理由

鋼板に比べて固い

自動車のボディに使われる鋼板は、高張力鋼板、通称「ハイテン鋼」と呼ばれています。

素材から圧延して鋼板にできるため加工性に富み、様々なデザイン形状を実現しなければならない自動車のボディに向いています。

一方、ステンレス鋼板はハイテン鋼よりも丈夫で錆びにくく価格もハイテン鋼とあまり変わりませんが、素材が固いためプレスによる加工が難しいのです。

もちろん「難しい」のであって出来ないことはないのですが、コスト高になってしまい採算が合わなくなります。

修理しづらい

ステンレスはハイテン鋼より固いため加工しづらい、とお話ししましたが、加工しづらい=修理しづらいのです。

事故などで出来た凹み傷を修復するには、鋼板であれば表から引っ張る、裏側から叩くなどである程度の表面を出して、パテ埋め→研磨→塗装することで修復可能です。

しかしステンレスだと、素材が固いため凹みを叩いて表面を出すのが鋼板のようにいきません。

一般的なハイテン鋼+塗装仕上げであれば、多少の凹凸はパテ埋め・研磨で表面を出して塗装でキレイに仕上げられますが、ステンレスボディで塗装無しだと、叩きで表面をキレイに出すのは難しいです。

パテを使うにしてもステンレス用パテを使わなければなりませんし、塗装もステンレス塗装用の塗料を使わなければ素材に密着しません。

つまり鋼板用の補修材料が使えないので、修理も割高になってしまいます。

そもそも、市販車でステンレスボディの車がほとんどありませんので、一般の自動車板金・塗装業者でステンレスを扱えるところはほとんど無いと思います。

ステンレス外装が使われる分野

とは言え、乗り物系の外装の全てで使われないかと言えばそんなことはありません。

例えば電車などはデザイン的に平面が多いため、ステンレス鋼板が積極的に使われます。

食器やカップなどの小型なものであればプレス機による加工も容易ですが、自動車のように3次元曲面がある大型の加工を行うためには、かなりの設備投資が必要となるため「難しい」のです。

それに自動車はカラーラインナップを用意する必要があるため塗装が必須です。

どうせ塗装するなら、加工が容易なハイテン鋼材でボディを成形したほうがコスト的にメリットがあります。

かつてはステンレスボディだった車

バック・トゥ・ザ・フューチャーで有名なDMCのデロリアンのボディはステンレスで有名ですね。

ステンレスは錆びないのであえて塗装せず、ヘアライン仕上げのややくすんだグレーが近未来感を醸し出していました。

デロリアンは、「理想の車をつくりたい」とGMからスピンアウトしたジョン・デロリアン氏が立ち上げたデロリアン・モーター・カンパニー社(DMC)の車ですが、見た目とは裏腹に初期型のクオリティが低く、予約キャンセルが相次いで1982年に倒産してしまいます。

2年の間に生産されたDMC-12は約9,000台と散々な結果に。

しかし、1985年に公開されたバック・トゥ・ザ・フューチャーでタイムマシンのベース車に起用されると再び脚光を浴び、現在に至るまでにマニアのコレクション対象となっています。

DMCのデロリアンがBTTFで採用された理由は「ステンレス仕上げの金属感がタイムマシンの雰囲気に向いていた」ということから、近未来感のイメージにピッタリだったのでしょう。

ステンレスは人間の生活を一新させた素材

ステンレスと一言でいっても、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、析出硬化系と、特性に応じた素材があり、それぞれ向き不向きがあります。

ステンレスが錆びないのは、素材にクロム(Cr)を含んでいることにあります。

鉄(Fe)に一定数クロム(Cr)を混ぜると、表面に不動態皮膜ができるため、耐食性が向上するんですね。

さらにそこにニッケル(Ni)を加えると不動態皮膜が厚くなるため、より錆びに強くなります。

クロム18%、ニッケル8%を含有するステンレスを「18-8ステンレス」といいますが、一方でニッケルを含まない「18-0ステンレス」という素材もあります。

食器や調理器具に「18-8」と表記があれば結構いい素材を使っているなと、「18-0」だと比較的安価な素材だなと判断できます。

18-0の調理器具がダメと言ってるのではなく、そこは価格見合いですね。見た目は18-8も18-0も変わらないので。

ステンレスが出来たのは1900年代初めで、比較的最近出来た合金です。

この「錆びない」金属が出来たことで、生活用具や医療機材が飛躍的に発展しました。

それによって人類が享受したメリットは計り知れません。

僕は大学が機械工学系だったのですが、内燃・外燃機関系よりも金属材料、とりわけステンレスに興味を惹かれ、硬度と靱性を両立するステンレス素材を卒業研究のテーマとしました。

金(Au)や銀(Ag)といった貴金属よりも、Ni/Cr/Mo/W/Cなどの組合せで性格をガラリと変える鉄(Fe)のほうが面白かったんですね。

今では全く関係のないIT系の仕事に就いていますが、今でもホームセンターでSUS304とかSUS316という記号を見ると当時を思い出します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました