最近はカワサキが熱いですね。
Z1/Z2のリバイバルとしてZ900RS、軽快な乗り味を求めるユーザ向けに並列4気筒のNinja 250、ネオクラシックを求めるユーザにはW800やメグロなど、長年のユーザから初心者までの趣向を捉えるのが上手いです。
5月に公開される映画「トップガン マーヴェリック」ではトム・クルーズがH2を駆ってストーリーにスパイスを効かせています。
特に、最近はW650/W800やZ900RSといったリバイバルモデルのヒットもあって、以前から噂されていたZ650RSが2021年9月に世界同時公開されました。
「ザッパーの再来!」と往年のカワサキファンならずとも胸が熱くなったオジサンは多かったはず(笑)
このZ650RSですが、2022年4月に国内販売されることが1月に発表されるや否や、注文が殺到して予約すらできない状況が続いているそうです。
今回はこのZ650RSについて紹介します。
仕様諸元
■全長:2,065mm ■全幅:800mm ■全高:1,115mm
■ホイールベース:1,405mm ■シート高:800mm
■車両重量:190kg ■燃費:31.8km/L(国交省届出60km/h走行時)
■エンジン型式:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒
■排気量:649cm3
■最高出力:50kW[68PS]/8,000rpm
■最大トルク:63N・m/6,700rpm
■燃料タンク容量:12L
■変速機形式:常時噛合式6段リターン式
■タイヤサイズ:前:120/70ZR17 後:160/60ZR17
■アンチロックブレーキ(ABS):有り
■スリッパークラッチ:有り
■発売年月:2022年4月
■メーカー希望小売価格:Z650RS:1,012,000円(税込)、Z650RS 50th Anniversary:1,100,000円(税込)
1970年代に発売されたZ650はZ2の弟分的な存在で、エンジン形式も兄貴分と同じDOHC並列4気筒でしたが、Z650RSは現行のZ650(↓画像)のエンジンDOHC並列2気筒を流用しています。
「4気筒じゃないZ650なんてザッパーじゃないよ」なんて声も一部にはありますが、僕は2気筒エンジンの採用は正解だと思います。
このクラスでカワサキが狙ったのは「軽快感」だと思うんですよね。
そうなると、横の張り出しが大きい4気筒よりもスリムな2気筒のほうが足着きはいいし取り回しも楽です。
2気筒とは言え最大出力68PSですから、1000cc換算だと104PS、十分ハイパワーですね。
50周年アニバーサリーモデルもラインナップ
今年はカワサキの”Z”が誕生して50周年。
そこでZ650RSにも50th Anniversaryモデルとして火の玉カラーがラインナップされています。
この火の玉カラーは、初代Z900RSのファイヤーボールカラー(火の玉カラー)をオマージュしているそうです。
カワサキのネイキッドでこの色は鉄板ですね。
当然ですがZ900RSのほうにも同様のファイヤーボールカラーがアニバーサリーモデルとしてラインナップされています。
「このぐらいのサイズがいいんだよ」と再認識させられるバイク
実は、3月にビックサイトで開催された第49回東京モーターサイクルショーのカワサキブースで実車を確認してきました。
跨がった第一印象は、
何がいいって、まず車格がちょうどいいんですよ。
例えば、Z900RSに跨がってみると意外と燃料タンクの幅が大きいことに戸惑います。
なんというか、燃料タンクの存在感というか「圧」が強い(笑)。
もちろん慣れればなんてことないのですが、それでも満タンで230kgほどもある車重とタンクの大きさは、ふとしたときに「うっ」と感じるんですよね。
それが、2気筒エンジンのおかげで横幅が抑えられ、跨がったときの燃料タンクの主張が抑えられています。
恐らく、私のような170cm前後の方なら、跨がったときに同じような印象を受けるのではないかと思います。
しかもシート高800mmなのに足着きがいい。172cm/65kgの僕だと両足がベッタリ地面に着くぐらい。
以前乗っていたZRX1200Rのシート高は790mmですが、並列4気筒で横の張り出しが大きく、両足の踵が地面に着きませんでした。
これは2気筒エンジンの恩恵だと思います。
といった、ビッグバイクにちょっと疲れた人には超オススメです。
ライバルはXSR700、SV650、CB650R
このZ650RSのライバルは他メーカーで言えば、ヤマハXSR700、スズキSV650X、ホンダCB650Rあたりになるかと思います。
僕自身がそうでしたが、ビッグバイクって少し持て余すんですよね。
確かに、ビッグトルクによる余裕の走りは乗ってて楽しいし、所有する満足感も高い。
だけど、リッターバイクのポテンシャルを存分に引き出すにはそれ相当の腕が必要で、そのためにサーキット通ったりジムカーナに参加したりするのはちょっと面倒臭い、と思っちゃうんですよね。
もっと気軽に楽しみたい。
そういったニーズに応えられるのが、401cc~1000ccのクラスだと思うのです。
そう考えると、二輪メーカーの自主規制から生まれたナナハンは、今思うとよくできたクラスだと思います。
特にリッターバイクに乗ってから750ccクラスに乗ると、そのバランスの良さに驚かされます。
ビッグバイクを持て余す人に超オススメ
「最近、バイクをひっぱり出して乗り出すまでが億劫」というような人ほど、Z650RSをオススメしたいです。
僕はZRX1200Rに乗っていた頃は、エンジンをおいしい回転数までキチッと回して走ることがほとんど出来ませんでした。
ビッグバイクのポテンシャルを十分引き出せるスキルが無かったと言えばそうかもしれません。(きっとそうなのだと思います)
でもSR400に乗換えると、キッチリ回して走ることが怖くなく、峠道をヒラヒラを走る楽しさというか、マシンを全開にして走る楽しさを味わうことができました。
もちろんZRX1200Rに比べれば遅くてパワーもありませんが、「ぶん回して走る」感覚はZRXでは味わえない、なんとも言えない楽しさがあります。
Z650RSは250ccや400ccからのステップアップにもちょうどいいですし、大排気量車からもう一つ車格を落として気軽にのりたい、と言った人には超オススメです。
番外:”ザッパー”って何?
1976年にZ1(Z900RS)/Z2(Z750RS)の弟分として発売されたZ650RSの愛称が”ZAPPER”(ザッパー)だったのです。
日本語で風を切り裂く擬音を「ザッ」「ビュッ」を表現しますが、それの英語版が”ZAP”。そこから作った造語が”ZAPPER”です。(”ZAP”はよくスーパーマンやスパイダーマンなどのアメコミに出てきますね)
元々「Z1ジュニア」という位置付けで、軽快で風を切り裂くような乗り味をイメージして付けられたと言われています。
Z650RSのエンジンをベースとしたスポーツモデルを「ザッパー系」とくくったりします。
兄貴分のZ1は、その開発コードを「ニューヨークステーキ」としているところからもわかるように、北米市場の攻略を命題としたマシンで、実際に北米で大ヒットしました。
北米での大ヒットをうけて、国内向けにボアダウンしたものがZ2です。
Z1は当時としては高性能なバイクでしたが、車体が大柄で重厚なことや過剰品質と言われるほどの作り込みが販売価格に影響し、既に北米で人気を博していたCB750Fourに対抗しづらくなっていました。
営業サイドからは「もっと手軽で、市場で他社に対抗しうる4気筒650ccが欲しい」との要望からZ650ccが企画された経緯があります。
Z650の開発コードが「サーロインステーキ」なのは有名な話で、高級な「ニューヨークステーキ」に対して庶民的な「サーロインステーキ」を開発コードにしたのは、Z1に対してもっと手軽に軽快に乗れるマシンを開発する、という意味がありました。
その後、その系譜はZ750FX-Ⅱ、Z750FX-Ⅲ、Z750GP、GPz750、GPz750ターボ、といろいろと迷走しながらも受け継がれていきました。
1980年代中頃に入ると、トップガンで一躍有名になったGPZ900Rといった水冷エンジンが主流になっていきますが、1980年代後半にネイキッドブームが到来したことを受けて、1990年にゼファー750が発売。
空冷エンジンのゼファーは、かつてのZ1/Z2を彷彿させるスタイルで大ヒットしました。
その後、その空冷エンジンはZR-7に受け継がれましたが、環境規制の波には逆らえず2008年に販売終了。ザッパーの系譜はここで途絶えます。
それから14年後の2022年に、Z650RSは”ザッパー”の愛称と共に復活したので、初代Z650RSを知るオジサン達が盛り上がっているわけです。
まぁそんな歴史を知らなくても、車重が180kg台で扱いやすく、軽快な180°クランクのパラレルツインは「気負わずに乗れる大型バイク」だと思います。
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