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バイクで走り出してすぐのエンジン不調は、キャブレターアイシングかも?

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晩秋や冬にバイクで走り始めてしばらくすると、エンジンが思うように吹けなくなったり、場合によってはエンジンが止まったりすることはありませんか?

原因はいくつか考えられますが、その一つに「キャブレターアイシング」という症状があります。

今回は、キャブレター車特有のキャブレターアイシングについて説明します。

現在のバイクを取り巻く状況

厳しい排ガス規制に対応するために、現在新車販売されている自動車やバイクでキャブレター車はほぼ無くなってしまいました。

現在新車で販売されている車、バイクの燃料制御方式は全てフューエルインジェクション方式(電子燃料噴射方式:FI)で、新規に販売されるキャブレター車はほぼありません。

自動車は平成に入った頃には既にフューエルインジェクション化が進み、バイクのほうは2008年にほとんどのキャブレター車は生産終了になっています。

あのSR400もキャブレター仕様車は2008年に生産終了となっています。

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しかしバイクは車よりも長らくキャブレター仕様車が販売されていたことから、今でもキャブレター車は多く、中古市場にも相当数出回っています。

キャブレターとはなんぞや?

自動車、バイクのエンジンはガソリンを燃料として動くのはご存知だと思いますが、ガソリンを液体のまま燃やしても動力として取り出しづらいので、ガソリンを霧状にして燃焼室に送り込んでプラグで点火することで人工的に爆発を起こします。

この爆発力を回転運動に変換して動力として取り出すわけです。

で、このガソリンを霧状にする部品がキャブレター(carburetor)で、動作原理は家庭で使っている霧吹きと同じです。

キャブレターのメリット

比較的構造が簡単で電子制御を必要とせず、分解・清掃・調整すれば長く使えるので整備性に優れています。

もちろん調整には専門的な知識と経験が必要ですが、枯れた技術であるため整備技術やノウハウが蓄積されています。

キャブレターのデメリット

一番のデメリットは、排気ガスをクリーンにできないことです。

キャブレターによる燃料噴射では運転状況に応じた燃料噴射量を細かく制御することができず、未燃焼ガスや窒素酸化物(NOx)が多く含まれてしまいます。

電子燃料噴射で制御すると、運転状況に応じてかなり細かく燃料噴射量を制御出来るので、排ガス規制に対応しやすくなるのです。

こういった理由から自動車では80年代後半から90年代にかけてフューエルインジェクション方式がが急速に普及しました。

キャブレターアイシングとは

…とは言っても、バイクはまだまだキャブレター車が多いですから、キャブレターにまつわるトラブルも少なくありません。

その一つに冒頭に挙げた「キャブレターアイシング」という現象があります。

キャブレターとは上で説明したようにガソリンを気化させる装置で、液体は気化するときに周囲の熱を奪う特性があります。(気化熱)

スプレーを5秒ぐらい連続噴射すると缶が冷たくなったことはありませんか?

あれは缶の中の液体が気化する際に熱を奪っていくために冷たくなるんです。夏の打ち水とかも気化熱を利用して涼を取りますね。

夏場であれば気化熱でキャブレターが冷えても外気温が高いので問題になりませんが、冬で外気温が0度近くまで下がると、気化熱で更に温度が下がってキャブレターに流入する空気が凍りついてしまうのです。この症状がキャブレターアイシングです。

キャブレターアイシングが起きると、アクセルを開けても吹けなくなったり、スロットルバルブが凍りついたりします。

スロットルバルブが凍りつくと、アクセルを戻してもエンジンの回転が落ちなくなって大変危険です。

キャブレターアイシングの発生する気象条件

キャブレターアイシングは冬になると必ず起きるわけではなく、気象条件が重なったときに発生しやすくなります。

<キャブレターアイシングの発生しやすい条件>
・気温が氷点下近くまで冷え込んだとき
・湿度が高いとき

湿度が高いということは空気に含まれる水分量が多いということなので、キャブレターに吸い込まれたときに氷点下まで冷やされると、空気中の水分が凍りついて燃料を気化できなくなるんですね。

いわゆる「霜が下りた」ときなどはキャブレターアイシングが発生しやすい条件です。

関東地方だと冬場はいつも空っ風が吹いて乾燥していますが、湿気を含んだ南風が入ってきたときの夜に出かけようとすると、キャブアイスが発生する気象条件にマッチします。

キャブレターアイシングを回避するには

キャブレターアイシングを回避するにはキャブレターを暖めるしかありません。

キャブアイスが発生するのは、湿度が高くて気温が低いときに暖気せずにすぐに出発してしまったときです。

走り出してエンジンがすぐに暖まればいいのですが、外気温が低いと走行風も冷たいのでエンジンの熱がキャブレターまで回らず、その間どんどん気化熱が奪われてキャブレターが氷点下になってしまうんです。

そのため、湿度が高くで気温が低いときにキャブレター車で出かける時は、暖気をしっかりと行ってエンジンとキャブレターを十分温めてから出発するようにします。

エンジンが十分に温まっていれば、走行風が冷たくてもエンジンの熱と相まってキャブレターの凍結を防ぐことができます。

小型飛行機、小型ヘリコプターは今もキャブレター式が多い

実はキャブレターアイシングの影響が深刻なのは、小型飛行機やモータグライダー、小型ヘリコプターなどの航空機なんです。

有名なセスナ172やロビンソンR22などは今もキャブレター+レシプロエンジンが使われています。燃料噴射機構の構造が簡単で信頼性が高いので小型航空機の分野では今も主流の方式です。

航空機はたとえ地上で気温20℃、湿度40%だとしても、上空に上がればすぐに気温が下がってキャブレターアイシングの条件に合致してしまいます。雲の中は湿度100%ですから、キャブレターアイシングが発生しやすい典型的な条件なんです。

そのため、キャブレター式の航空機には必ずキャブヒーターがついています。

車やバイクでキャブレターアイシングが起きても最悪エンジンが止まるだけで済みますが、航空機で発生するとエンジンが止まって墜落してしまうので、キャブレターアイシングには特に気を使います。(現在でもキャブレターアイシングによる墜落事故は度々起きています)

キャブレターアイシングのまとめ

キャブレターアイシング自体は昔から知られた現象で、現代では冷却水をキャブレター側に回して暖めるようなキャブヒート構造を採用している車種が多いです。(運転中の冷却水はエンジンを冷却した際の熱で温かいので)

そのためキャブレターアイシングは比較的起きづらい現象ですが、湿度が高くて気温が低いときにエンジンが冷え切ったバイクで暖機運転せずに出発してしまうと、まれにキャブレターアイシングが起きてしまうことがあります。
 

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