先日、約1年のブランクを経て、新型SR400が新環境基準(平成28年排ガス規制)に適合してリリースされました。
SR400は初心者からベテランまで楽しめる非常に稀有なモデルです。
特に、スピードに疲れたライダーには二輪車の楽しみを再確認させてくれるバイクではないでしょうか。
そんなSR400ですが、車両の外観こそデビュー当時から一貫して変わらないものの、中身は年代によって少しずつ変更されています。
SR400に求める楽しみ方によっては、せっかく車両を手に入れても「なんか思ってたのと違う…」「やりたかったことができないなんて…」なんてことになりかねません。
今回はSRの「使い方」による購入ガイドをお伝えしたいと思います。
SR400の歴代モデルについて
SR400の歴代モデルについては、ここよりも詳しいサイトが世にたくさんありますので、各モデル間の違いなどはそちらのサイトを参照してください。
一番よくまとめられているのは、Web Mr.Bikeの「YAMAHA SR大全」のページ。SRの歴史をおさえたいのであればぜひ一読するといいでしょう。雑誌社が書いているだけあって非常によくまとめられています。
SR400はざっくりいうと発売時期によって以下の5つに別れます。
1978年~1984年:初代モデル(1型)
XT500のエンジンをベースに、ボアは変更せずにショートストローク化で排気量を400ccに。
SR400の旧車と言えばドラムブレーキをイメージするが、実はデビュー当初はディスクブレーキだったりする。
しかもこの1型はSRのアイコンとも言えるフォークブーツがまだ装備されていなかった。
1985年~2000年:2代目(2型)
フロントブレーキがディスクブレーキからドラムブレーキに変更され、フォークブーツも装備されたのがこのモデルから。
バックステップ化、ハンドル幅のナロー(狭)化、カム、ロッカアームの変更による耐久性向上などの細部変更が行われている。
いわゆる「2型」と言えばフロントがドラムブレーキのモデルを指す。
2001年~2008年:3代目(3型)
年々厳しくなる排ガス規制に対応するため、排気ガスを浄化するエアインダクションを装備。フロントブレーキがドラムから2ポッドディスクブレーキに変更。
2003年からは盗難防止機能であるイモビライザーが装備されるようになる。
平成19年排ガス規制に対応できず、キャブレター仕様車はこの3型で終了。
2009年~2017年:4代目(4型)
このまま生産終了かと思われた2009年、吸気系を従来の負圧キャブレター式からフューエルインジェクション(FI)式に変更して復活。
クラッチスプリングが変更されて従来よりも軽いクラッチ操作になるなど、中身は進化しながらも外観は従来のデザインをそのまま踏襲している。
このブログに度々登場する僕のSRはこの4型です。
しかし平成28年度排ガス規制に対応できず、2017年に生産終了。
2018年11月~:5代目(5型)
4型の生産終了が発表されてからおよそ1年後の2018年9月、平成28年排ガス規制に対応した新型SR400が発表。(←いまココ)
新型SR400は2018年11月より販売開始。
どのSR400を選ぶべきか?
ざっくり言ってしまえば1型から5型まで外観はほとんど変わりませんし、おそらくバイクに詳しくない人には1型~5型を並べてもどれがどれかわからないぐらいでしょう。
だからと言って、思いっきりカスタムを楽しみたい人が4型や5型を買ってしまうと自由度が少なくて楽しめませんし、たまの休日にバイクを楽しみたい人が安いからと言って1型~3型を買ってしまうとエンジン始動にてこずって「こんなはずじゃなかった」となってしまいます。
ここでは、SRに求める「楽しみ方」毎に、狙うべきモデルを解説します。
がっつりカスタムを楽しみたい人にはキャブレター仕様の1型~3型
マフラーからハンドル、ステップを変えてカフェレーサー風なカスタムをしたい!とか、給排気系をイジってカリカリにチューンしたいという人は間違っても2003年以降のモデルを買ってはいけません。
具体的に言うと、3型の2003年以降、4型、5型ですね。
なぜなら、4型と5型はFIモデルで燃料噴射量をECUという車載コンピュータが制御しているので、給排気系に手を入れる余地が無いのです。
FIモデルの給排気系は、厳密にはカスタム出来ないこともありませんが、ECU自体を変更しなければならないこともあって、カスタムのハードルが非常に高いのです。
それならば、キャブ仕様の1型/2型/3型(~2002年まで)をベースにしたほうが市販パーツは多いですし、カスタムのノウハウが入手しやすいので、比較的リーズナブルにカスタムを楽しむことができます。
またイモビライザーが装備されているモデル(3型の2003年式以降)は、完全なバッテリーレスのスカチューンができません。
スカチューンとは、バッテリーレスにして本来バッテリーが搭載されている部分を”スカスカ”にしてしまうカスタムです。
いくらキックで始動するとは言え、FIモデルは電気が無いと始動すらできません。そのため、FIモデルはその構造上バッテリーレスには出来ないのです。
3型はキャブレター仕様なのでバッテリーレスに出来るのですが、2003年以降は盗難防止装置であるイモビライザーが標準装備されているため、完全なバッテリーレスにすることができないのです。
頑張れば出来ないこともありませんが、そもそも盗難防止装置が簡単に外せて他の部品で代用できてしまえば、盗難防止装置の意味が無いので、イモビライザー付きの車両をバッテリーレスにするのはかなりの労力が必要です。
ということで、いろいろとカスタムしたい人は1型、2型、3型(イモビライザー無し)のキャブレター仕様車を狙いましょう。
そんなにカスタムはしないけど、DIYで分解・整備を楽しみたい人もキャブ仕様車
そんなにカスタムはしないけど、基本整備から分解整備まで自分でやってみたい!という人にはキャブレター仕様車の1型~3型がベスト。
というのも、単気筒399ccの4ストローク空冷エンジンは、内燃機関の基本を学習をするのに最適な教材なんです。
・冷却システムが無く構造がシンプル(空冷エンジン)
・キャブレターも1つしかないので分解・洗浄・組立・調整が容易
容易と言ってもキャブレターの分解/組立は初心者が簡単に出来る作業ではありませんが、これから内燃機関について勉強したい初心者にとっては取っ掛かりやすい車両だと思います。
それにプラグを交換するのにタンクの脱着が不要なのは、今どきのバイクでは珍しいです。しかもプラグ1本ですし。
吸排気系をイジらずに楽しみたい人にはFI仕様がオススメ
吸排気系をイジらずに、外観を中心にカスタムしたい人であれば4型、もしくは現行タイプの5型がオススメです。
というのも、4型と5型はFI(フューエルインジェクション:燃料噴射装置)なので、吸排気系をイジってパワーアップしたいとか、ボアアップしたい、といったカスタムをするには、ECU(Engine Control Unit:エンジン制御ユニット)自体をカスタムする必要があります。
ECU自体は電子基板で、中に書き込まれているマイコン用プログラムを書き換えなければならず、カスタムのハードルが一気に上がるのです。
そういったカスタムをせず、外観のカスタムを楽しむのであれば、エンジン始動性がいいFI仕様がオススメです。
予算が厳しい人でも、4型の初期である2009~2014年式辺りであれば、程度の割には比較的価格が安い車両もよく見かけます。
またノーマルでも、特にSR本来のスタイルが好きで購入を考えている人は、新型SR(5型)よりも4型がオススメ。
というのも、新型SR(5型)では平成28年排ガス規制に対応するため、蒸発ガソリンを大気開放せずにガソリンタンクに戻すキャニスターがフレームのダウンチューブに配置されています。
SR本来のスタイルが好きな人にとってみれば、このキャニスターは邪魔な装備に映ってしまうかもしれません。
4型であれば、始動性が高いFI仕様でありながらキャニスターが無いので、外観は非常にスッキリしています。
ぶっちゃけ4型と5型の間には明確な走行性能の差はありません。
最大トルクの発生回転数が4型では5,500rpmだったのが5型では3,000rpmと、実用回転域にトルクのピークを持ってきた、という違いはありますが、全体的な乗り味はそう大きく変わりません。
そのため、スタイル重視であれば4型を入手したほうが満足できるかと思います。
初心者で、始動に苦労したくなければFI仕様
初心者にとってはキックスタートが鬼門かもしれませんが、それも慣れればなんてことはありません。
FIはECU(コンピュータ)が温度センサーからの外気温情報によって燃料噴射量を決めるため、始動にもっとも適した燃料を噴射してくれます。そのためFI車にはチョークがありません。
2ヶ月間全く乗らなくても、キック1発で始動できるのはそのためです。
キャブレター車はどんなに丁寧に整備して保管に気を使ったとしても、1ヶ月乗らなかったら始動するのが大変です。どんなに慣れた人でも1発で始動することはまずありません。
キャブレター車だと、よく「機嫌が悪い」とか「拗ねてしまった」みたいな言い方をしますが、出先で機嫌を損ねられると結構泣きたくなります。
キャブ車歴が長くて、そんな「機嫌を損ねてしまった」ときでも始動させられる人は問題ありませんが、「キャブレターのアナログ差を楽しみたい!」というような想いが無ければ、FI仕様の車両を購入することをオススメします。(4型以降)
繰り返しますが、FIモデルはとにかく始動性が最高です。
気温が暑かろうが寒かろうがスタートはキック一発でOK。
一方、キャブレター仕様は乗らない期間が長ければ長いほど始動には苦労します。
しかもあまりにもエンジンがかからないと、プラグがガソリンでカブって(濡れて)しまい、プラグを外さないと回復出来なくなってしまいます。
初心者が出かける前にキック始動で苦労してしまったり、出先での始動で苦労してしまうと、バイク自体が嫌になってしまう可能性が高くなるでしょう。
「キャブレター車を所有したい」「2型のドラムブレーキ仕様が欲しかった」といった明確な目的がないのであれば、始動性が高いFI仕様(4型以降)を購入したほうがバイクを楽しめると思います。
僕のSRもFI仕様ですが、本当にエンジン始動がラクです。
「SRはキックが~」と言う人がいますが、FI車はどんな気温でもキック一発で始動するので、SRに慣れた今は「キックの煩わしさ?何それ?」って感じです。
下の動画がある意味、SRの始動しずらさを表しています。
久しぶりにSRを引っ張り出して乗ろうとしたけどエンジンがかからない…ってヤツです。
もちろんこんなにエンジンがかからないのは、普段乗っていないからであって、ちょくちょく乗っていればここまで手こずることはそんなにありません。
それはともかく、このSR500とライダーはオシャレですね。ドイツ語なので何を言ってるのかわからないのですが(笑
SR購入のまとめ
・初心者は始動性がいいFI仕様がオススメ
・外観が気になる人には新型よりも4型がオススメ
SRは本当に間口が広いバイクです。
思いっきりカスタムを楽しむ人、SRのスタイルに惚れている人、SRでトコトコ走るのが楽しい人、出かけるためのツールとしてSRが好きな人など、その間口が広いのもSRの特徴だと思います。
その間口の広さ故に、単に安いからと言って初心者が古いキャブレター車を買ってしまったり、カスタムを楽しみたいのにFI仕様車を買ってしまうと、そもそもの目的を達成することができないばかりか、バイクに対する熱量も下がってしまいかねません。
「自分がSRに求めていることは何か?」を整理した上で、適切なモデルを選んでくださいね!
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