新車でトラブることってあまり無いですが、購入して最初の車検を過ぎたぐらいからポツポツと故障が起き始めます。
出発前にエンジンがかからないとか、パンクしていた、なんていうのは出発する前にわかったのでまだいいのですが、一番イヤなのは出先でのトラブルですよね。
で、なんだかんだ言って僕ももう40年近くもバイクに乗ってきましたが、結局、トラブル防止には普段からの運行前点検(始業前点検)が一番有効です。
今回はこのバイクの運行前点検について書きたいと思います。
”ネンオシャチエブクトウバシメ”とは
教習所の自動二輪の学科で「ネンオシャチエブクトウバシメ」という呪文を教わったことはありませんか?
この呪文「ネンオシャチエブクトウバシメ」とは、バイクの点検項目を並べたものなんです。
どういう意味か順番に説明しますね。
ネン → 燃料
燃料系統のチェックです。
昔は燃料計が装備されていないバイクも多かったので、乗車前に確認する必要がありました。
燃料計が無くてどうやってガソリンの量を知るの?と思われる人もいるかもしれませんが、昔は自分のバイクの燃費をあらかじめ知っていて、トリップメーターの走行距離から大体のガソリン消費量を推測していました。
車両の年数が経つと、燃料ホースが劣化してひび割れてきます。
ひび割れたところからガソリンが漏れて、満タンだったタンクがすっかり空になっていた、なんてことあるので要チェックです。
僕は過去に乗っていたZRX1200R、TW200で、燃料ホースの劣化でガソリン漏れに見舞われたことがあります。
特に野外駐車している人は要注意です。ゴムホースは紫外線の影響を受けますから。
毎日乗らない人は、キャブレターのガソリンがオーバーフローしないようにガソリンコックをOFFにして駐車する人も多いと思います。
久しぶりに乗るときにガソリンコックをONにするのを忘れると、走り出してしばらくしてエンジンが止まってパニックになるので、乗車前にガソリンコックを確認する癖を付けましょう。
オ → オイル
エンジンからオイル漏れはないか、量は十分か、極端に汚れていないかをチェックします。
オイル循環方式がウェットサンプ(400cc以上の多気筒車に多い方式)の場合は、エンジン始動前のオイルレベルを確認してください。(エンジン動作中はオイルポンプも動作するのでオイル窓のレベルは不正確です)
基本的にはオイル量が規定範囲内に入っていればOK。
シャ → 車輪(タイヤ)
タイヤに異物が刺さっていないか、溝に石や異物は挟まっていないか、タイヤの空気圧は正常かをチェックします。
しばらく乗っていないとタイヤの空気が抜けている場合があるので、エアゲージで空気圧が適正かどうかチェックしましょう。
ほとんどの車種ではチェーンカバーに規定の空気圧が書いてあります。
チエ → チェーン
チェーンが極端にたるんでいないか、潤滑油は十分かをチェックします。
シャフトドライブ車(Z1300やV-MAXなど)は、この項目はシャフトドライブ周りのチェックに読み替えてください。
ブ → ブレーキ
ブレーキレバーを奥まで握らないとブレーキが効かない場合は、ブレーキパッドが減り過ぎている場合があります。そんなときは要交換です。(ブレーキ関係はケチると命に関わります。さっさと交換してしまいましょう)
ブレーキフルード自体は蒸発しませんが、ブレーキパッドの摩耗が進むとフルードがホース側に出ていくので、リザーバータンク内のフルード量が減少します。
フルードレベルが下限より下がるとエアを噛んでブレーキがカチっと効かなくなる恐れがあるので、フルードを適宜補充しましょう。
ブレーキパッドが無くなると、ブレーキパッドの金属部分とディスクローターの金属部が直接あたるので、ブレーキが効かなくなります。(鉄を鉄で挟んでも滑るだけ)
またそうなってしまうと、ディスクローターもボロボロに削られてしまうため余計な出費がかさみます。(ティスクローター交換)
ク → クラッチ
クラッチワイヤーの遊びをチェックします。
油圧クラッチの場合は、クラッチフルードの量が適正範囲に入っているかチェックします。
クラッチフルードもブレーキフルードも同じフルード液です。(ブレーキ用、クラッチ用と別れていません)
トウ → 灯火類
ヘッドライト、ウインカ、テールランプ、ブレーキランプは点灯/点滅するか確認します。
よくあるのは電球切れです。
バ → バッテリー
まずキーを回して通電させたときに、メーター内にある各ランプが点灯するときに弱弱しい点き方をするときは、バッテリーが弱っています。
そのままセルスターターが回るのであれば、エンジンを掛けて走行しながらバッテリーを充電します。
セルが回らなかったら要充電ですね。
バッテリー液が下限より下がっている場合は、補充液を追加して液面を正常範囲内にします。
バッテリーのマイナス端子が白い粉をふいていないか確認します。
しばらく乗らないとバッテリー端子がサルフェーションによって白い粉が生じる場合があります。(バッテリーがへたっている
この白い粉(硫酸塩)が生じている状態で乗り続けると、突然エンジンがかからなくなる場合があります。この白い粉は電気を通さないため、バッテリーからの電流が遮断されて、次に始動するときにスターターが回らなくなります。(バッテリーから電流を取り出せなくなる)
サルフェーションが起きたときは、バッテリー端子をワイヤーブラシなどで白い粉を全て落として再充電します。
シメ → 締め(ネジ、ボルト)
ボルト、ナットに緩みはないかチェックします。
レンチなどでボルトやナットを軽く叩くと、きちんと締まっているボルトは「カンカン」「キンキン」といった甲高い音がしますが、緩んでると濁ったような少し鈍い音がします。
一番いいのは実際にボルトを工具で軽く回してみることです。
SR400やCB400SSなどの単気筒車は振動が大きくボルトやナットが緩みやすいので、特に意識してチェックしましょう。
”ネンオシャチエブクトウバシメ”は響きはダサいですが、インパクトのある語呂なのですぐに覚えられると思います。
短縮版は「ブタトネンリョウ」
ネンオシャチエブクトウバシメだと長すぎる!という人は、短縮版の「ブタトネンリョウ」があります。
・タ:タイヤ
・ト:灯火類
・ネンリョウ:ガソリン
最低限これだけはチェックしようね、ってことです。
この呪文は不具合を見つけることが目的ではない
じゃあ、いつもバイクで走り出す前に、この「ネンオシャチエブクトウバシメ」で点検すれば出先でトラブルは起きないのか?と言えばそんなことはありません。
これらのチェックは、あくまでも走り出す前の車体状態を静的にチェックしただけに過ぎません。
「じゃあ運行前点検なんてしなくても同じでは?」と思われるかもしれませんが、実はこの運行前点検はライダーに今のバイクの状態を把握させるきっかけになるんです。
どういうことかというと、ネンオシャチエブクトウバシメを唱えながら車体の周りを一周すれば、ほぼすべての部位にざっと目を通すことになります。
ほとんどの場合はチェックしても問題は見つからないと思いますが、毎回、運行前点検を繰り返していくと、バイクの状態が目に見えて分かるようになります。
例えば、
→今度、バイク用品店でブレーキパッド買ってくるか
→来週バイク屋で見てもらうかな
→来週オイル交換しようかな
というように、今すぐ問題にはならないけど近々メンテナンスが必要なことが頭にインプットされていくんですね。
その結果、消耗品が使用限界になる前に交換することができますし、劣化による故障を事前に見つけられるので、出先で車両トラブルにあう確率が低くなるのです。
まとめ
・時間が無いときは「ブタトネンリョウ」でもOK
・毎回乗る前にやっていると愛車の状態を把握できる
僕はこの呪文を唱えながら大体1分程度で各部のチェックをやっています。
もちろんこんな短時間だとタイヤの空気圧やバッテリー端子の確認までは出来ませんが、それでも車体を一周して各ブロックを目視確認すると「あー、このアルミパーツ錆びてきちゃったな。今度磨かなきゃ」とか「サイドスタンドが緩くなったな」といったような、チェック項目以外の部分にも目が届くようになります。
出発前のほんの1~2分を使うだけで出先でのトラブルを未然に防げるので、この呪文を覚えておくと便利ですよ。
ちなみにこの呪文は自動車でも使えます。
乗る前に車の周りを軽く一周見回すだけでも、結構トラブルは未然に防げるものです。
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