車やバイクを新車で買った時は「ならし運転」をしたほうがいいと言われています。
一般的に”慣らし運転”とは約500~1000kmまではエンジン回転数を抑えて、機械部品をなじませるわけですが、一方では「慣らし運転なんてやらなくても大丈夫」という意見もあります。
どちらが本当なのでしょうか?
今回はそんな”慣らし運転”について解説します。
なぜ昔は慣らし運転が必要だったのか?
以前はメーカーも率先して「○○○○kmまではエンジン回転数を△△△△rpmに抑えて”慣らし運転”してください」と取扱説明書に書いていました。
これは、当時の量産機械加工の精度があまり高くなかったことから、最初のうちは低い負荷で機械部品を”なじませる”必要があったことに由来しています。
もちろんもっと高い精度で加工することは当時の技術力でも可能でしたが、そうすると今度は加工費が高くなって車両コストに跳ね返ってしまいます。
しかし現代では機械加工の精度が向上し、以前と同程度のコストで数段高い精度の部品を製造できるようになってきました。
そのため、最近の車・バイクは慣らし運転の必要性が以前ほど言われなくなったのです。
自動車メーカーが「慣らし運転不要」という理由とは?
トヨタやホンダは「基本的には慣らし運転は不要」とホームページの「よくある質問(FAQ)」で言っています。
<トヨタの場合>
Q:慣らし運転はしたほうがいいですか?
A:慣らし運転の必要はありません。ごく一般的な安全運転に心がけていただければ、各部品のなじみは自然と出てきます。お客様が新しい車に慣れられるための期間を慣らし運転の期間と考えてください。
引用:https://toyota.jp/faq/after_service/others/0001.html
<ホンダの場合>
Q:慣らし運転は必要ですか。
A:現在の車は、エンジンやその他の部品精度が向上しているため、慣らし運転を行う必要はありません。ただし、機械の性能保持と寿命を延ばす為には以下の期間はエンジンや駆動系の保護の為に、急激なアクセル操作や急発進を出来るだけ避けて下さい。・取扱説明書に慣らし運転期間の記載がある場合 → その期間
・取扱説明書に慣らし運転期間の記載が無い場合 → 1000km走行までを慣らし運転の期間
引用:http://customer.honda.co.jp/faq2/userqa.do?user=customer&faq=faq_auto&id=62709&parent=30049
どちらのメーカーも法定速度内で普通の使い方をしていれば、それ自体が「慣らし運転」に相当すると言っています。
ホンダのほうはもう少し踏み込んで「基本的には(慣らし運転は)不要だが、性能保持と寿命を延ばすには1000kmぐらいやったほうがいいですよ」といったマイルドな表現になっていますね。
僕の慣らし運転についての考え方
僕自身は、現代の車・バイクであれば基本的に慣らし運転は必要無いと思います。
2004年に購入したZRX1200Rは慣らし運転は全く意識せずに最初から普通に乗ってましたが、特にトラブルもありませんし、消耗品の劣化はありましたが14年目の現在まで機関トラブルは一度も無く過ごしてきました。
ただ、最初からレッドゾーン近くまでぶん回すとかフルブレーキングさせてみる、といったようなことはせず、法定速度内の安全運転で普通に乗っていたので、その乗り方が「慣らし運転」と言えばそうかもしれません。
一応、取扱説明書には「800kmまでは4000回展以下、1600kmまでは6000回転以下で慣らし運転すると寿命が伸びます」とは書いてありましたが、目を吊り上げて峠でも攻めない限りはそんなに回さないので、僕は回転数や距離は全く意識せずに普通に乗っていました。
たまに「慣らし運転の最中にちょっとだけ指定された回転数を少し越えてしまったけど、大丈夫ですか?」と聞かれることがありますが、全く問題ありません。
多分、初めての新車で大事に乗っていこうとする想いからくる不安だったのだと思いますが、車やバイクのエンジンはそんなにシビアな機械じゃないので多少越えたぐらいでは全く問題ありません。
オイル管理はしっかりする
ただ、そうは言っても新車だと最初は部品同士の当たりによる金属粉がでるので、初回1,000~2,000kmの間にオイル、オイルフィルタを交換しています。
できれば最初のオイル交換時はオイル内に金属粉がどの程度混ざっているか、自分の目で確かめてみるのがいいと思います。
ショップや量販店にオイル交換を依頼する場合でも「初めてのオイル交換なのでオイルがどんな状態か見てみたいのですが」とお願いすれば、ほとんどのお店では見せてくれます。(まれに客がピットに入るのを嫌がるお店もあるので、必ず確認を)
ならし運転が必要と考えるケースは?
一方で、慣らし運転が必要なケースも中にはあります。
スポーツモデルの車・バイク
当然ですがスポーツカーはスポーツ走行を楽しむユーザー向けに作っている車ですから、車体やエンジンには高い負荷がかかります。
そのため、高負荷運転を多用する環境でも性能を保持するためには、初期アタリをしっかり取るための「慣らし運転」が必要になります。
エンジンや駆動系の修理をしたとき
エンジン内部や駆動系を修理したときは、組み上げたときの不具合を確認する意味で慣らし運転が必要です。多分修理完了時に整備士から指示があると思います。
これは、摩耗が進んだ既存の部品と摩耗していない新しい部品とではクリアランス(可動部の隙間)が異なるため、慣らし運転をしてアタリを取る(馴染ませる)必要があります。
機械部品は、クリアランスが小さすぎても摩擦が大きすぎてダメですし、クリアランスが大きすぎるとガタが大きくなって動力ロスが大きくなってしまいます。
慣らし運転のまとめ
・長持ちさせるなら、法定速度での通常運転を1000kmを目処に行えばOK
・動力系、駆動系の部品交換をしたときは慣らし運転をして部品を馴染ませる
普通に法定速度内で習熟運転していれば、エンジンや駆動系は自然に”慣らされ”ますので、あまりシビアに「○○○kmまでは4000回転、××××kmまでは6000回転で慣らす」と意識する必要はありません。
むしろタイヤが一皮むけるまでの100kmの間に急ブレーキを掛けることのほうが危ないですから、まずは慣らしよりも運転者が車両に慣れることを先に考えるべきですね。
個人的には、慣らし運転を意識するよりもオイル管理(量チェック、定期交換)を意識したほうがよっぽど車体が長持ちするような気がします。
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