フロントに配置されたエンジンの動力を一番近い前輪で駆動することは理にかなっており、それゆえに最近の乗用車はほぼ100%がFF車です。
一般の乗用車でFRなのは一部のスポーツカーぐらいです。
※FF車、FR車の違いについてはこちらの記事をどうぞ。
しかしタクシーに限って言えば未だにFR車が多いです。なぜでしょうか?
タクシーは整備性が大事
一般的にFF車(前輪駆動車)は前方にエンジンとトランスミッションが搭載されるので、どうしてもエンジンルームが手狭になります。
FR車(後輪駆動車)はトランスミッションを後輪側に配置できるため、スペースに余裕があり整備性がいいんですね。
FF車のエンジンルームを見ると、エンジンやトランスミッションが窮屈に配置されていることがわかると思います。
それにFR車はFF車に比べて駆動部分の部品点数が少ないことも整備性を向上させています。
一般的にタクシー車両は、平均で月に1万km、年間12万km程度は走りますので、新車で稼働を始めてから廃車になるまで50万km~100万km程度稼働します。
当然、それだけ走行すれば確率的にも故障や事故も多くなりますが「構造が特殊なのでディーラーの整備工場でしか対応できない」という車ではダウンタイム(車が使えない期間)が長くなって収益性に影響してしまいます。
そのため、タクシーなどの営業車両には整備性が重視されるわけです。
FR車は旋回半径が小さい
FR車は操舵輪(前輪)と駆動輪(後輪)が別れているので、前輪の操舵角を大きく取ることができます。
一方FF車は、操舵輪と駆動輪を兼用しているため、あまり大きな操舵角を取れないといった制約があります。
タクシーは方向転換や路地での切り返しなどをよく行うため、旋回半径が小さいFR車が好まれています。
しかし今では技術改良が進み、FR車でもFF車でも旋回半径にほとんど差が無くなるぐらいにまでなりました。
最近のタクシー車両事情
従来のタクシー用車両であるクラウンベースのコンフォート(トヨタ)やセドリック(日産)は共にFR車ですが、実は生産終了が決定しています。(セドリックは2014年に既に生産終了)
最近ではFF車の耐久性や整備性も向上したため、メンテナンスコストや運用コストはFR車とあまり差が無くなってきました。
そのため、トヨタでは2017年から後継車としてFF車の”JPN TAXI”が投入される予定です。
ロンドンのブラックキャブみたいですね。
客室は従来のクラウンベースの車両よりも広く、FF車のため後席にドライブシャフトを通すための出っ張りもないので、3人座っても窮屈でないそうです。
日産はNV200という商用ミニバンをベースとしたタクシー車両を既に市場投入しています。
この車両は街中でもたまに見かけますよね。
こちらもFF車なので後席を広く取れて快適そうです。
2020年の東京オリンピックの頃には、現在のコンフォート、セドリックベースのFR車のタクシーは少数になって、上に挙げたミニバンベースのFF車のタクシーが主流になっているでしょうね。
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