バイクに乗る限り逃れられないのが油脂類の交換で、その中でもエンジンオイルの交換は一番最初に遭遇する消耗品交換ではないでしょうか。
オイル交換は購入したバイク屋さんでやってもらっている、という人も多いと思いますが、一度自分でオイル交換をやってみると、バイクへの理解も深まってより愛着が湧くのと、交換作業の費用感を体感することでショップに依頼するときの交換費用が適正なのかどうかを判断できるようになります。
今回はこのバイクのオイル交換方法について解説します。
バイクメンテナンスの中でもオイル交換は簡単な部類
バイクのメンテナンスの中でも、オイル交換は比較的簡単な部類に入る作業です。
語弊を承知で言えば、ドレンボルトを外してオイルを抜いて、ドレンボルトを締めて新オイルを入れるだけの作業ですから、難易度は全然高くありません。
僕は以前は自分でオイル交換をしていましたが、現在のマンションに引っ越してきてからは作業スペースが取れないのと、正直面倒臭いのでバイク屋さんにお願いしています。
とは言え、自分でオイル交換していた経験があれば、バイク屋さんの工賃が適正なのか、オイルの価格、オイルフィルターの価格がわかるので、自分で納得した上で作業をお願いできるメリットがあります。
やったことが無いと、どうしてもショップの言いなりに作業してもらうしかありませんからね。
「今までオイル交換なんてやったことが無いよ~」という人でも、きちんと確認しながら進めれば誰でもできる作業です。
事前に準備するもの
オイル交換には最低限、以下のものが必要です。
工具
エンジン下部のドレンボルトを外すための工具です。
スパナタイプよりもメガネレンチとかソケットレンチを使ったほうがボルトの頭をナメないのでオススメです。
これがメガネレンチ。
両側に穴が開いているから通称”メガネ”レンチですが、英語ではオフセットレンチ(offset-wrench)と呼ばれています。
これはソケットレンチ。
ボルトサイズに合わせたソケットをラチェットハンドルに付け替えることで、様々な大きさのボルトを一つのラチェットハンドルで扱える工具です。
狭い場所でもいちいち工具を回し替えなくていいので作業性があがります。
メガネレンチセットもソケットレンチセットも、ホームセンターで1セット1,000~1,500円程度で売っているので、この機会にどちらか入手しておくといいでしょう。
オイルドレンパン
エンジン下部でオイルを受けるためのトレーです。
100円ショップで売ってるトレーで代用するのアリですが、廃油は処理して廃棄する必要があるので、廃油ボックスを買ったほうが後処理がラクです。
この廃油ボックスにはオイル吸着剤が入っており、直接オイルをこの箱で受けて添付のビニール袋に包めば燃えるゴミとして廃棄できます。
ドレンボルトワッシャー(12mm)
オイルのドレンボルトは、ほとんどの場合はM12というボルトで、このM12ボルトにはワッシャーが付いています。
このワッシャーはアルミ製で、ドレンボルトはこのワッシャーを潰しながら締め付けることでパッキンの役割を果たしています。(なのでドレンワッシャーには柔らかいアルミニウムや銅といった素材が使われる)
このワッシャーはオイル交換毎に新品に交換します。
中にはケチって再利用する人もいますが、ワッシャーは100円/枚もしないのでケチらずに一緒に交換しましょう。
新オイル
バイクの取扱説明書にオイル量とグレードが記載されているので、それに合致するオイルを買っておきましょう。
初めてオイル交換するのであれば、取扱説明書に書いてある純正オイルを使えば間違いないです。
車種にもよりますが、~125ccの車両で使用オイルが1リットル程度、400cc以上の車両では3~4リットル程度必要です。
オイルジョッキ
オイルは、オイルだけ交換する場合と、オイルフィルターも同時に交換する場合ではオイル量が少し変わります。
例えば僕が乗っているZRX1200Rではフィルター交換無しでは2.7L、フィルター交換時は3.0Lのオイル量なので、規定量を入れるにはオイル量を計測できるオイルジョッキが必要になります。
でもこのオイルジョッキって結構大きくて置き場所に困るので、僕は100円ショップで買ってきた漏斗(ジョウゴ)と料理用の計量カップ(1L)で代用しています。
ウエス
ウエスとは「ボロ布」のことで、周囲に付着したオイルを拭き取るのに使います。
ペーパータオルがあればそれで代用してもOK。
僕は着古したTシャツをハサミで切って使っています。
(必要に応じて)ゴム手袋
僕はオイル交換は素手で作業しますが、油汚れが手につくのが嫌な人は軍手ではなくゴム手袋を使うようにしてください。
軍手だと、熱いオイルが手にかかったときに軍手がオイルを吸って火傷する可能性があります。
そのため、手袋をするのであれば耐油グローブか、キッチン用のゴム手袋(厚手タイプのもの)を使うようにしましょう。
(できれば)トルクレンチ
ドレンボルトはほとんどの車種で締め付けトルクが規定されています。
これはドレンボルトはワッシャーを潰して締め付けてオイルが漏れないようにしていますが、逆に締め付けすぎるとワッシャーが変形し過ぎてパッキンの役割を果たさなくなります。
トルクレンチがあれば車のタイヤ交換などにも使えるので、持っていると何かと便利です。
オイル交換の作業手順
オイル交換の手順を説明します。
暖機運転をしてオイルを温めておく
必ずしも暖機運転をしなければならない、というわけではありませんが、オイルは温まっているほうが排出しやすいので、キンキンに冷えているよりは、近所を走ってきた後に作業したほうがやりやすいです。
オイルパンをドレンボルトの下におく
オイル受け用のドレンパンか廃油ボックスをドレンボルトの下に置いて、オイルを受ける準備をします。
ドレンボルトを外してオイルを抜く
メガネレンチまたはソケットレンチでドレンボルトを外します。
ボルトは反時計回りで外れます。
なんでわざわざそんなことを言うのかと言えば、ドレンボルトの多くはエンジン下にあって作業者から見ると裏側にあるので、緩めるつもりが逆に締め付けていた、という人が時々いるからです。
ドレンボルトが外れるとオイルが勢いよく出てきますので、周囲を汚さないようオイルが廃油ボックスに落ちるようにします。
オイルが大体抜けて出てこなくなったら、バイクを揺すって残ったオイルを落とします。
新品のドレンワッシャーに交換してドレンボルトを締める
ドレンボルトに新品のドレンワッシャーを付けて、手でドレンボルトを締め付けます。
いきなりソケットレンチで締め付けてはダメですよ!
ドレンボルトはエンジンブロックにネジ山が切られているので、噛み合ってないボルトを無理やりねじ込むとその後の修理が大変なことになります。
ネジもボルトもそうですが、まずは穴にボルトを指したら反時計回り(緩める方向)にゆっくりと回します。そうするとほんの少しだけ「カチッ」と手応えのある段差を感じるポイントがあります。
そこがネジ山の噛合ポイントなので、手応えのあったポイントを過ぎてから時計回り(締める方向)に手で回すと、ボルトがすんなり入っていくはずです。
手で締められるところまでは手で締めて、その後メガネレンチ、ボックスレンチで締めて、最後にトルクレンチを使って規定トルクで締め上げます。
トルクレンチが無い場合は、レンチで締めて固くなったところから1/4回転締めればOKです。ドレンワッシャーが潰れるイメージで締めるといいです。(自己責任でお願いします)
オイルを規定量入れる
入れるオイル量は取扱説明書に記載されていますので、オイルジョッキを使って正確にオイルを入れていきます。
特にオイルフィルターを交換する場合としない場合では入れるオイル量が異なりますので注意してください。
その後、クランクケース横についているオイルレベル窓を見て、オイルがUPPERレベルからLOWERレベルの間に入っているかどうか確認します。
取説の規定量を入れればオイルレベルは範囲内に収まるはずですが、LOWERレベルに近ければオイルを足して、許容レベルの中間になるように微調整します。
最後にオイルキャップを締めておきます。
【重要】ドレンボルト回りのオイルを拭き取る
これが重要なのですが、最後にドレンボルト回りやオイルキャップ周辺に付着したオイルをキレイに拭き取ります。
オイルが付着したままエンジンを掛けると、エンジンの熱でオイルが燃えて白煙が出まくります。
故障車っぽくてカッコ悪いので、オイル交換後はエンジンブロックや周囲にオイルが付着していないか確認しましょう。
まとめ
オイル交換は作業難易度は低い割にはメンテナンスをやった感が大きいので、初心者の人にはぜひチャレンジして欲しいメンテナンスです。
廃油も初めは真っ黒でいかにも汚れているように感じますが、ウエスやペーパータオルに取ってみると実は濃い茶色でそれほど汚れていなかったり、温度よってはサラサラだったりヌルヌルだったりと、触ってみないとわからなかったことがたくさんあります。
エンジンオイルって1000kmも走ると、どんなオイルでも真っ黒になります。
それを見せられて「ほら、もうこんなに真っ黒になっていますよ」と言われると、オイル交換の経験が無い人であれば言われるがままに交換してしまうのではないでしょうか?
しかしオイル交換の経験があれば、単に酸化しているオイルなのか、本当に使用によって汚れたオイルなのか違いがわかるようになりますから、交換するタイミングも自分で判断できるようになります。
こういった簡単な整備から始めて、徐々に出来る整備を増やしていくと、バイクへの理解が深まってより愛車への愛情が増していきますし、プロに整備をお願いするときも作業の費用イメージを持って依頼することができるようになります。
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