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なぜバスにはAT車が少ないのか?

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路線バスや長距離バスって大体がマニュアル車(MT車)ですよね?

乗用車のほうは9割以上、ほぼ100%と言っていいぐらいAT車が普及しているのに、なんでバスは未だにMT車が多いんだろう?って不思議に思ったことはありませんか?

今回はそんなバスのAT化が進まない理由について説明します。

バスの運転は難しい

バスの運転って大型車両の中でも旅客を乗せている点で貨物車両とは違った難しさがあります。

その理由は、乗客人数の変化による積載重量の変動が大きいことや、運転中の業務、例えば両替、ICカードチャージ対応、行き先案内、身障者乗降のアシスト、乗客同士のトラブルなど車内マネジメントの負担が大きいなどが挙げられます。

確かに、誰も乗っていないガラガラのバスと、通勤ラッシュ時の超満員バスでは積載重量が全然違いますし、バス停での乗降によって常に積載重量が変化するなかで、乗客が不快にならないようソフトに運転するのは確かに神経使いますよね。

まだ慣れていない運転士のバスだと、シフトチェンジのときに体が前に放り出されそうになったり、停車するときのブレーキが雑だと前につんのめりそうになります。

その点ベテラン運転士はアクセル操作、シフト操作、ブレーキ操作の全てにそつがなくて、非常にスムーズです。

バス自体を運転するのはそれほど特殊な技能が必要なわけじゃありませんが、人を乗せて乗客が不快にならずかつ定時運行しなければならない「営業運転」が難しいんですね。

運転難しい→技術が解決する

しかし、こういった運転操作に慣れや技術が必要な分野は、テクノロジーによって敷居が下がるのが世の流れです。

例えば、かつては自動車と言えばMT車しかありませんでした。

MT車の最大の鬼門は何と言ってもクラッチ操作です。ベテランですら、気を抜いて発進しようとするとエンスト(エンジンストール)してしまいますから、初心者にしてみれば尚のこと難しい。

しかしオートマチック変速機(AT)が開発されたおかげで発進時のエンストは無くなり、渋滞時にクラッチ操作で左足がつりそうになることも無くなりました。

つまりATという技術が、運転技術を易化して自動車をより身近なものにしたわけです。

ということは、バスの運転技術の中でも大きなウェイトを占める「ソフトなシフト操作」などは、AT化することである程度解決出来るはずです。

アメリカのバスは20年以上前からATが主流

なんでそう思ったのかというと、AT先進国のアメリカは20年以上前から路線バスはAT車が主流だったことを思い出したんです。

1994年に初めてアメリカに行ったときは、空港からレンタカー会社までのバスや、市中の路線バスなど全てAT車でした。

運転士がアクセル踏むとエンジンの回転数はぐわーっと上がるのに、車体はゆっくりと発進していくんですね。なんかズルズル滑ってるクラッチみたいな感じで。

最初はなんでかなーと思っていたんですが、運転士がラフなアクセル操作をしても立っている乗客に加速ショックが加わらないようにわざとスリッパークラッチのような制御になっていたんです。

日本のバスに慣れている身にしてみると少しタルい感じがしますが、このATバスであれば運行にはさほど高度な操作技術は必要無いよなぁと、その合理性に関心したものです。

ちなみにちょうどその年(1994年)に公開されたキアヌ・リーブスの出世作「スピード」に出てくるバスもAT車でしたね。

日本のバスのAT化が進まなかった理由

アメリカでは20年以上も前からAT仕様のバスが普及していたのに、日本ではAT化が進まなかったのはなぜでしょうか?

AT車は車両代が高い

理由の一つにAT車はMT車にくらべて構造が複雑な分、車両価格が高かったことが挙げられます。

バス会社では車両を一度に何十台も購入するため、その価格差は無視できず導入に躊躇する会社も多かったと言われています。

しかし今ではAT技術が普及してきたので以前ほどの価格差はありません。

というか今はMT車の設定を無くして、6速AT車やセミAT車(クラッチ操作不要でギアのみ手動操作)のみ、というバスメーカーが増えてきています。

燃費が悪い

それともう一つの理由は、一般的にMT車に比べるとAT車のほうが燃費が悪いことが挙げられます。

というのも、エンジンの動力を駆動輪に伝える部分をトルクコンバーターで行っているために、どうしてもマニュアル操作によるクラッチ接続に比べて動力が無駄になっている部分が出てしまうんですね。

アメリカでATの普及が進んだのは、ガソリンの価格が安かったという事情もあります。

1990年代前半、日本では100円/リッター前後だったのに対してアメリカでは1ドル/ガロン(ざっくり円換算すると25円/リッター)でしたから、ATの燃費の悪さはさほど大きな問題になりません。

しかしエンジン自体の燃費向上や伝達損失の改善などの技術革新が進んだ結果、今では燃費差はほとんど無視できるぐらいにまで改善されてきました。

ちなみに今から30年前のAT車の普及が急激に進んでいた時代は、なんとなく古参ドライバーによる「ATなんて運転が下手な連中が乗るもの」という空気があって、当時彼らがAT車を嫌う理由の一つが「AT車は燃費が悪いから」というものでした。

「AT車はMT車より燃費が悪い」というのは事実ではありますが、ただ当時のエンジンでもMT車とAT車で燃費差は2km/リッターも無かったと思うので、どちらかと言えば「MT車を乗りこなしている優越感を維持するための理由」という面のほうが大きかったような気がします。

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ほとんど燃費差がありません。

まとめ

バスにAT車の普及が進まなかったのは、AT車は車両価格がMT車にくらべて高かったのと、燃費が悪いという面が大きかったわけですが、実は今はバスメーカーでもMT車の設定が少なくなってきて、セミAT(クラッチ操作なしで運転手が手動でシフトチェンジする)か、6速ATの設定がメインになってきました。

おそらくその背景には、ネット通販による貨物量の増加によって物流業界全体が人手不足に陥ってることも要因の一つです。

つまり業界全体でドライバーが不足しているために、大型のドライバーも慢性的に不足しています。

MT車両は慣れるまでに時間がかかりますが、AT車両になれば車両に対する慣熟時間も少なくなるので、今後はAT車両の導入が進んでいくものと思われます。
 

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