車に詳しくない人でもエンジンオイルの管理が重要であることは何となく理解していると思いますが、意外とブレーキオイルについてはあまり気にしない人が少なくありません。
ブレーキオイルは正しくは「ブレーキフルード」といいます。
潤滑油(オイル)ではないのでブレーキ液(フルード)ですね。
自動車ではほぼ100%、二輪車でもディスクブレーキ装着車で使用している超重要な油脂です。
今回はこのブレーキフルードの役割、劣化するとどうなるのか、交換時期などについて解説したいと思います。
そもそもブレーキってどういう仕組みなの?
自動車・バイクのブレーキにはざっくり大きく分けて、ドラムブレーキとディスクブレーキの2種類があります。
下記の動画解説がわかりやすいです。
最近はドラムブレーキがらディスクブレーキへの置き換えが進んでおり、二輪車でも新車で発売される車両はほぼ全てディスクブレーキになっています。
余談ですが、一般的にはディスクブレーキのほうがドラムブレーキより制動力が高いと思われていますが、実際は逆です。
制動力だけで言えば
なんです。
ではなぜ、ディスクブレーキのほうが多く採用されているかというと、ディスクブレーキのほうがコントロール性が高いから。
ブレーキを踏んだ量に応じて制動力を得られるので、運転においては使いやすいのです。
ドラムブレーキは制動力が大きい反面、効きがガツンと来るのでコントロールしづらいという欠点があります。
特に前輪がドラムブレーキだと、ガツっと効いた瞬間さらに前輪に荷重がかかるので、いわゆる「カックンブレーキ」になりやすいのです。
ブレーキフルードはなぜ劣化する?
話をブレーキフルードに戻します(笑)
ディスクブレーキは、ブレーキを踏むとブレーキフルードを介してブレーキキャリパー内のピストンを押し出し、ブレーキパッドをローター(ブレーキディスク)に押しつけます。パスカルの原理ですね。
このブレーキフルードの材質はポリエチレングリコールモノエーテルという、舌を噛みそうな名称ですが、一般的には「グリコール系」と呼ばれます。
このグリコール系の大きな特徴が「吸湿性が高い」という点です。
吸湿性が高いというのはブレーキシステムとしては欠点になりますが、それ以上に利点が多いので今も使われています。
なぜ普通のオイルを使わないの?
こんなことを思った人もいるかもしれません。
僕もそう思いました。
しかし潤滑用のオイルでは粘度が高すぎて、オイルの移動が遅くブレーキピストンが戻りづらくなります。
ブレーキを離しても制動力が解放されるのに時間がかかるので、これでは運転し辛いですよね。
そこで
・圧縮しても体積が縮まない
・粘度が少ない
という条件を満たす液体がグリコール系なのです。
ブレーキフルードが劣化すると何が悪いの?
ブレーキフルードは新品状態だと透明な薄~い黄色ですが、劣化してくると下の画像のように茶色に変色してきます。
劣化する要因は熱と吸湿による水分です。
ブレーキはブレーキローターをパッドで挟んでホイールの回転を止めるため、ブレーキローターやキャリパーが高温になります。
言ってみれば運動エネルギーを熱に変換することで制動しているわけです。
キャリパー内のブレーキフルードも当然熱の影響をうけるため、加熱→放熱の繰り返しによって劣化します。
もう一つの劣化要因は吸湿です。
ブレーキフルードの主成分であるグリコール系は吸湿する性質があるため、リザーバータンク内の空気に含まれる水分を吸収します。
吸湿すると沸点が水に近づくため性能が落ちるのです。
ブレーキフルードのドライ沸点とウェット沸点の違い
現在販売されている一般乗用車のブレーキフルードはDOT3またはDOT4が採用されています。
DOTとはDepartment Of Transportationの略で、DOT3とかDOT4というのはアメリカの運輸省が定めた規格です。
ドライ沸点 | ウェット沸点 | |
DOT3 | 205℃以上 | 140℃以上 |
DOT4 | 230℃以上 | 155℃以上 |
DOT5 | 260℃以上 | 180℃以上 |
ドライ沸点とは新品状態での沸点で、ウェット沸点とは吸湿率3.7%以下、おおよそ1~2年使用したときの沸点です。
ブレーキフルードは高熱となるブレーキ部品に触れる液体のため、水のように100℃で沸騰しては使い物になりません。
そのため、新品時の性能(ドライ沸点)と使用劣化時の性能(ウェット沸点)を規定しているのです。
DOT4を例に見ると、ドライ沸点が230℃に対してウェット沸点が155℃と約33%も性能がダウンします。
吸湿する、ということは沸点が水に近づくということなんですね。
ブレーキフルードの交換時期は?
そんなブレーキフルードですが、交換のタイミングはどのように判断するとよいでしょうか?
交換の目安は「色」です。
新品のブレーキフルードは透明~薄いレモン色をしていますが、劣化が進むと紅茶のような茶色がかった飴色になります。
僕は、年間5,000km以下であれば車検毎に交換、それ以上走るようなら1年毎に交換するようにしています。
大体そのぐらいの使用頻度だと、フルードの色も上の画像のような飴色になってくるので、交換のタイミングがわかりやすいと思います。
ブレーキフルードは注ぎ足しはダメ
ブレーキパッドが減ってくると、ブレーキキャリパー内のピストンが押し出されるため、ブレーキフルードもその分だけ減ります。
減ったからと言って、新しいブレーキフルードを継ぎ足すのはNGです。
というのも、継ぎ足したフルードと元々入っていたフルードは比重が異なるため混ざりづらいのです。(吸湿による違い)
また、元々入っているフルードは劣化してウェット沸点が下がっています。
キャリパー内のフルードと継ぎ足したフルードは混ざらないので、ウェット沸点は劣化したままとなるのです。
継ぎ足さなければならないほどブレーキフルードが減っているということは、ブレーキパッドの摩耗が進んでいるか、途中でフルード漏れしているかのどちらかなので、点検&フルード交換しましょう。
僕はバイクのフルード交換は自分でやりますが、車はワンマンブリーダーが無いと面倒なので、整備工場にお願いしています。
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