先日、二輪車を執拗に煽った挙げ句に、故意に追突して二輪車に乗っている男性を死亡させたとして、自動車を運転していた40歳の男性が逮捕されました。
自動車事故による死亡事故は、加害者が故意に行っても「危険運転致死傷罪」に問われるのが一般的ですが、今回は「殺人罪」で起訴されたそうです。
煽り運転の厳罰化について以前書きましたが、
今回は煽り運転と殺人罪の関係について解説したいと思います。
事件の概要
2018年7月に、大阪府堺市で大学生が運転するオートバイに追い抜かれたことに腹を立てた40歳の男性が、車でオートバイを執拗に追いかけて煽り、96~97km/hで追突して大学生に脳挫傷を負わせ死亡させるというショッキングな事件がありました。
逮捕された40歳の男性被疑者は「殺害するつもりはなかった」と殺意を否定する供述をするものの、被疑者のドライブレコーダーの映像を解析したところ、約1キロに渡ってクラクションやパッシングを繰り返して煽っていたことが明らかになり、しかも追突後に被疑者が「はい、終わり」という音声も残されていました。
東名高速での煽り運転死傷事件以降、社会的にも煽り運転に対する批判が日に日に大きくなる中で起きたこの事件は、私達のような一般の運転者にも襲いかかってくる可能性があることを示唆する、非常に恐ろしい事件です。
このように道路上には、自身の感情をコントロールできないクレイジードライバーが今もたくさん運転しているのです。
なぜ検察は殺人罪で起訴したのか?
自動車事故による死傷事件は、不注意によるものであれば業務上過失致死罪、飲酒運転や薬物影響下によるものであれば危険運転致死傷罪に問われるのが一般的です。
しかし今回のケースは、
・相手に追突して転倒させた後に「はい、終わり」という音声が残っていた。
ということなどから、故意に追突させたことが立証出来ると判断して殺人罪で起訴したものと思われます。
殺人罪が成立する要件とは
殺人罪が成立するには、故意=殺意があることが必要です。
つまり「相手が死ぬことをわかっていてその行為を行う」ということが必要なのです。
交通事故では不注意で死傷事故が起きることが多く、加害者側の当時の認識が故意だったのかそうでなかったのかの立証が難しい場合が多いです。
ドライブレコーダーの記録が決め手に
今回、検察が殺人罪での起訴に踏み切ったのは、皮肉にも加害者のドライブレコーダーの記録が決め手になりました。
1キロ以上に渡ってクラクションやパッシングを繰り返して執拗に追い回して100km/h近い速度で追突すれば、相手が死亡することは容易に想像できたと考えられますし、その後の「はい、終わり」という音声は、被害者が死んでもかまわないといった「未必の故意」があるものとして、殺人罪での起訴に踏み切ったのでしょう。
それにしても、自分の行為が記録されていることを忘れ、その記録が後々自分にとって不利になることにすら思いが及ばずに人を殺めてしまうのは、単なる短気では済まされない重篤なな欠陥人間と言っても過言ではありません。
東名夫婦死亡事故の場合
2017年6月に東名高速で執拗な煽り運転によって起きた死亡事故、東名夫婦死亡事故の福岡県の容疑者は「危険運転致死傷罪」で起訴されていますが、なぜ「殺人罪」で起訴できなかったのでしょうか?
これは、加害者が追い越し車線で被害者の前に出て車を止めたこと自体は、相手が死ぬことをわかっていたのかもしれませんが、加害者も含めてその場にいた全員が死ぬ危険性があったわけで、その行為だけで「殺人の故意」があったとまでは立証できなかったのです。
例えば、加害者が被害者の車を止めた後に、自分だけ安全な場所に避難していたとすれば、これは「殺人の故意」があったと言えるので、殺人罪での立件は可能だったかもしれません。
まとめ
今回の事件は、加害者の車のドライブレコーダーが証拠になったからよかったものの、もし加害者の車にドライブレコーダーが装着されていなかったら「追突したかもしれないが殺すつもりはなかった」と証言されてしまうと、未必の故意を立証する手段が無くなってしまいます。
道路上には自己の感情をコントロールできない未熟な大人が、一般のドライバーに混じって何食わぬ顔で運転しています。
そんな連中から身を護るためには、以下の記事を参考にしてください。
僕は車を運転するにしろバイクを運転するにしろ、スマホをすぐに取り出して警察に通報できるようにしています。
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