よく車やバイク関係で「エンジンが焼き付いた」とか「カジリが出ている」って言い方を耳にしたことはありませんか?
車・バイクに詳しい人に聞くと、
・カムシャフト、ロッカアームに傷がつく
という説明はしてくれますが、なぜそうなってしまうのか?、そうなるとなぜダメなのか?というところまで理解している人はそんなに多くありません。
今回はそんな「焼き付き」「かじり」について解説したいと思います。
「焼き付き」とは
エンジンの「焼き付き」とは、何らかの理由で潤滑油(オイル)が回らなくなって、ピストンとシリンダーが高温になって溶けてしまうことを指します。
エンジンが毎分何千回転しても壊れないのは、オイルによって金属同士が触れ合う部分(摩擦面)を潤滑してくれていることと、オイルが循環することで冷却してくれるからなんです。
オイルが無い状態で金属同士が擦れ合うとどうなるでしょうか?
答えは、摩擦熱でお互いが溶けてしまいます。次の動画を見てください。
金属同士を摩擦させると、摩擦熱で真っ赤に溶けてドロドロになっちゃうんです。
実はこの動画は「摩擦溶接」といって、わざと金属同士を摩擦させて接触面を溶解させてくっつけています。(木材を摩擦で燃やしているのはデモンストレーションですが)
エンジンオイルが切れてしまうとエンジン内では金属同士の摩擦によって、動画と同じような状態が起きてしまうわけです。
「かじり」とは何か?
焼き付きと同様に言われるのが「かじり」。
バイクだと有名なところではGPZ系水冷エンジンのカムシャフトの”かじり”が有名です。
この「かじり(噛り)」という症状は焼き付きの一種で、何らかの原因でオイルが切れてしまうと、カムとロッカーアーム(給排気バルブを開閉するアーム)の接触面が高温になって溶解してしまうのです。
溶解したまま止まればそのままくっついてしまいますが、多くの場合は、相手側の金属を剥ぎ取ってしまって表面がガタガタに荒れてしまいます。
相手の金属をえぐるように剥ぎ取ってしまうので「かじる」「かじり」と言われています。
焼き付きが起きるとどうなるのか?
実際にエンジンオイルが無くなってしまうと、ピストンとシリンダが直接接触するため、摩擦熱によって接触面が溶解してしまいます。
そうなると空気を圧縮できなくなるので、内燃機関として仕事をすることができなくなり多くの場合はエンジンが停止してしまいます。
エンジンが止まると、今度は溶けた金属同士が固着してしまうために始動することができなくなるのです。
この状態が「焼き付き」ですね。正に「焼けて」「くっついた」わけです。
焼き付き、カジリを防ぐにはどうすればいいの?
焼き付きやカジリは、ほとんどの場合オイル切れが原因です。
要するに適切に潤滑されないために起きています。
そのためには以下の3つを注意するようにしましょう。
オイルの量が適正か、定期的にチェックする
比較的新しいクルマは大丈夫ですが、新車登録から10年を超える車は、エンジンのゴムパッキンやOリング、シール類の劣化が進んでいるため、オイル漏れが起きる可能性が高くなります。
そのため、月に1度はオイル量を確認して、量が減っているようであればオイルを補充してあげましょう。
またその際はオイル漏れを疑ってディーラーや整備工場で点検することをオススメします。
オイルを定期的に交換する
愛車の取扱説明書に記載されているエンジンオイル交換サイクルを目処に、定期的にエンジンオイル、オートマチックオイル(ATF)を交換するようにしましょう。
基本的に、定期的にオイル交換しており、オイル量が適切に管理されていれば、焼き付きやカジリはまず起きることはありません。
長時間のアイドリングに注意する(バイク)
バイクの一部の車種では、サイドスタンドを掛けた状態でアイドリングするとエンジンオイルがヘッド全体に回らずに「カムかじり」が起きやすい車種があります。
…ってGPZ900RとかGPZ750RなどのZ系水冷エンジンなんですけどね(笑
一般的に車やバイクは1週間程度でオイルが全てオイルパンに落ちて油膜切れを起こします。
それでも始動すればオイルポンプが動作して、摩擦熱が上がる前にオイルが全体に回って潤滑・冷却するので焼き付きやカジリは起きません。
しかし車種によってはサイドスタンドによって斜めになっているために、エンジン始動後もオイルが回らない部分が摩擦熱でカジってしまうのです。
そのため、アイドリングするときはセンタースタンドを掛けるか、乗車して車体を正立にした状態でアイドリングするようにします。(オイルがエンジン全体に回るように)
焼き付き・カジリのまとめ
・「かじり」は焼き付きの一種で、相手の金属を剥がし取ってしまうこと
・焼き付き・かじりの原因はほとんどがオイル切れによるもの
・オイル管理が適正になされていれば、焼き付き・かじりはまず起きない
ファミリーカーやコンパクトカーであれば、カー用品店や量販店が言うように3,000~5,000kmでオイル交換する必要はありませんが、オイル量が適正かどうかは気にしておいたほうがいいです。
僕は大体月1でオイル量をチェックしていますが、8年目を過ぎた辺りでオイル量がLOWER(下限)近くまで減っていたことがあったんです。先月のチェック時はUPPERとLOWERの中間だったのに。
オイル警告灯は点灯していなかったので最下限までは行ってませんでしたが、気になったのでディーラーで点検してもらったら、オイルパンのシール部が劣化してオイル漏れが発生していました。
その2週間後には車で帰省する予定だったので、つくづく日常点検が重要だったことを思い知らされました。
コメント
EHL理論の専門家であれば、油膜は絶対に切れないというでしょうね。しかし境界潤滑状態というのもうすでに油膜は切れています。電気抵抗を計った実験が調べればたくさん出てきます。しかし問題は「油膜が切れる」と言いたくなるような突然死(サドンデス)が起こるのはなぜかということです。それに明確な答えを出したのが久保田博士のCCSCモデル。なんと潤滑油由来の表面に張り付いたグラファイト膜(トライボフィルム)がナノメートルのダイヤモンドになるというものです。詳しくは「境界潤滑現象の本性」で検索してみてください。
メタルケンイチ さん
コメントありがとうございます。
解説ありがとうございます。勉強になります。
今後とも当ブログをよろしくお願いします。