この「横断歩道あり」の標識は教習所でも教わるし、学科試験でも出るので免許を持っている人なら誰でも知っているはずなのですが、横断歩道に人がいるときは車両は止まらなければならないことは、意外と知られていません。
周りに聞いても
という人が多いです。
来日した外国人が「日本では横断歩道を渡ろうとしても車が止まってくれない」「横断歩道を渡ろうとしたら轢かれそうになった」といった話もよく耳にしますね。
モータリゼーションが発達した国では、横断歩道に人がいたら止まって歩行者を優先させるのが一般的です。
5歳の男の子が横断歩道ではねられて死亡
2018年の1月に兵庫県西宮市の住宅地で、近くの自宅からアイスクリームを買いに行く途中だった男児が信号機の無い横断歩道を渡っているときに乗用車にはねられて亡くなるという痛ましい事故がありました。
男児は事故の直前、左右を見て横断歩道を渡ろうとする様子が目撃されていたと言います。
子を持つ親として、親御さんの気持ちを考えると胸が張り裂けそうで、とてもやりきれない気持ちになります。
ネットでは「5歳の子供に一人で出かけさせるな」といった辛辣な意見もありますが、僕はそれよりも「横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいるときは、手前で停止しなければならない」というルールが徹底されていない社会が問題だと思うのです。
道路交通法で明確に規定されている横断歩道のルールとは?
横断歩道に関するルールは道路交通法第38条1項で規定されています。
(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
http://elaws.e-gov.go.jp/
横断歩道を渡ろうとしている人がいるときは、横断歩道の手前で一時停止して歩行者を渡らせないといけない、と明確に規定しています。
これに違反した場合の罰則は第109条で規定されています。
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
(略)
一の四 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為(高速自動車国道等におけるものに限る。)をした者
二 第三十条(追越しを禁止する場所)、第三十三条(踏切の通過)第一項若しくは第二項、第三十八条(横断歩道等における歩行者等の優先)、第四十二条(徐行すべき場所)又は第四十三条(指定場所における一時停止)の規定の違反となるような行為をした者
http://elaws.e-gov.go.jp/
この違反は「横断歩行者等妨害」という違反で、道路交通法施行令の別表第二で違反点数が、別表第6で反則金が規定されています。
・2点
<反則金>
・大型車:12,000円
・普通車:9,000円
・二輪車:7,000円
・原付車:6,000円
歩行者が渡ろうとしているのに停車しないのは、マナー違反ところか違法です。
「横断歩行者妨害」という、道路交通法違反で交通反則通告制度(青切符)の対象なのです。
JAFが2021年8月11日~8月30日に「信号機のない横断歩道」における歩行者優先についての実態調査を全国で実施し、その結果を公開しました。
なんと7割の車がが止まらないという、ショッキングな結果です。
この調査結果は、多くのドライバーが歩行者が横断歩道を渡ろうとしたときに停車しないのは違反、という認識を持っていないことを如実に物語っています。
海外では横断歩道での一時停止が徹底している
アメリカやカナダなど北米では横断歩道に人がいるときはほぼ全ての車が手前で停車します。
僕は正直「アメリカなんて貧富の差が激しくてスーパーで拳銃売ってるような国なんだから車の運転も荒っぽいんだろうなぁ」なんて勝手に思っていたのですが、実際に現地で運転してみると、驚くほど運転マナーが良くてびっくりしたことがあります。
もちろん州法による罰則があるということもありますが、基本的にアメリカは歩行者や自転車などの交通弱者に対するドライバーの意識が高く、スクールバスが停車しているときも、子供の乗り降りが終わってバスが発車するまでじっと待っています。
一方、日本では歩行者に気づいて横断歩道の手前で停車すると、後ろの車にクラクションを鳴らされたり、ヒドイときは対向車線を追い越されたりすることすらあります。
横断歩道で停止するときは、歩行者が対向車に気づいているか気遣ってあげよう
僕は横断歩道で歩行者に気づいたときは停車するようにしていますが、歩行者の中には、こちらが止まったことを確認しただけで対向車線を確認せずに横断を始める人もいます。
とくに小さい子供だと注意がこちらにしか向いていなくて、対向車が止まることを確認せずに走り出そうとするときがあるので大変危険です。
もし対向車線の車に気づいていないときは、クラクションを鳴らして注意を引いて対向車線も確認するように促したり、対向車線の車にパッシングして横断者がいることを知らせてあげるなどしてあげましょう。
まとめ
・停車しない場合は横断歩行者等妨害という道交法違反となる(青切符)
・歩行者が横断歩道を渡るときは、対向車線の車に気づいているかどうか見てあげよう
横断歩道を渡ろうとする歩行者が車にホーンを鳴らされるという今の日本は、とても自動車先進国の交通環境とは言えません。
僕がアメリカに行ったときに思ったのは、意外と信号機が少ないことでした。
片道1車線の道路であれば横断歩道にはほとんど信号機はありませんし、住宅街の十字路は大抵は4ウェイストップ(先に交差点に入ってきた車が先に出られる)で信号機は設置されていません。
下のストリートビューはサンフランシスコのダウンタウンからほど近いサンセット地区のノリエガストリートの画像です。
ここからダウンタウン方面に向かうと、サンセットブールバードまでアベニューが11本交差していますが、信号機は一つも無く全て4ウェイストップです。
これ、日本だったらほぼ全てに信号機が設置されているでしょう。
アメリカが少ない信号機で交通の秩序が保たれているのは、自由主義が根付いていることが大きいのだと思います。
アメリカは国家や集団の権威による統制よりも個人が自由に判断・決断することを重んじる自由主義が根付いています。
大きな交差点は自治体が設置する信号(権威)により統制するが、小さな交差点ではルールだけを決めて、その遵守はドライバー個人に委ねられます。
このシステムが機能するにはドライバーのモラルが必要です。
一方、日本では公安委員会(権威)によって設置が決められます。個人の判断やモラルは二の次。
通行量が多少ある道路の横断歩道や十字路にはすぐに信号機が設置され、通行量がそんなに多くない時間帯でも信号機でストップ&ゴーが強制されてしまい、その結果、物流効率までもが落ちてしまっている状況です。
まさに「モラルの高い集団はルールが少なく、モラルの低い集団はルールが多くなる」ことを表しています。
日本は世界有数の自動車メーカー、バイクメーカーを有する自動車王国なのですから、交通マナーも世界に誇れるような国を目指したいものです。
物影に隠れてノルマ達成のための取締りよりも、こういったドライバーの意識向上のための交通取締りであれば市民も納得できるんですけどね。
”サンキューハザード”を点ける国民性を誇るよりも、子供やお年寄りが安心して横断歩道を渡れる交通マナーを持つことを願ってやみません。
コメント